REGULAR

『ベガルタ仙台はJ1にいなければいけない』 “今年のチーム”で上がりたいと願う、続・郷家友太の献身

2024.11.05

ベガルタ・ピッチサイドリポート第19回

その男は8月からキャプテンマークを巻いて、地元のクラブ・ベガルタ仙台をJ1のステージへと返り咲かせるべく、フルパワーで奮闘している。ユアテックスタジアム仙台がベガルタゴールドに染まる光景を何よりのエネルギーに、「このチームで上がりたい」と2024年シーズンのチームに強い思い入れを持つ郷家友太のさらなる活躍が、昇格に向けて絶対に欠かせないことは、サポーターが一番よくわかっている。そんな25歳の想いをおなじみの村林いづみが直撃する。

数字には現れないヒーローの貢献。自分よりも仲間の活躍に光を当てる

 「このスタジアム巻き込んだら、絶対に負けないから。全員で行くぞ!」

 郷家友太のたくましい声が第29節・いわきFC戦のロッカールームに響いた。それに仲間が応えた。地元・宮城県に戻って2シーズン目を迎えている25歳の彼は、8月の第27節・鹿児島ユナイテッドFC戦からキャプテンマークを任されるようになった。

 元々、溢れるほどの責任感でチームをけん引する存在だった。最近は左腕の腕章が、さらに彼の持ち前のキャプテンシーを際立たせ、育んでいるようにも感じられる。「昨シーズンの友太は二桁ゴール。全ての試合映像を見ましたが、今年は数字に出なくてもそれ以上の貢献をしてくれる」と森山佳郎監督も若きリーダーに全幅の信頼を寄せる。

キャプテンマークを左腕に巻く郷家(Photo: Vegalta Sendai)

 昨季、10ゴールを決めながら、ホーム・ユアテックスタジアム仙台では郷家に対し、一度もヒーローインタビューができなかった。アウェーでは決勝点も決めているが、ホームではなぜかその機会に恵まれなかった。他の選手のゴールとの兼ね合いで決勝点とはならなかったり、せっかく決めた試合で追いつかれたり。今季、初めてヒーローインタビューができたのは郷家のゴールで1-0の勝利となった鹿児島戦。この試合は、そこまでなかなか日の目を見なかった松澤香輝選手と梅田陸空選手による「GK完封リレー」が繰り広げられた劇的試合でもあった。

 郷家はせっかくのスポットライトにも「ゴールシーンはエロンも(有田)恵人も頑張ってくれたから。僕のゴールよりも、今日はマツさんと陸空に拍手をしてあげてください」と仲間に花を持たせた。彼が語るチームの功績には、自分以外の登場人物が多いのだ。

 「友太は練習でも全部100%でやります。そこは若い選手に見習ってもらいたいところ。加速走などで、『ここまではこのくらいで走って、最後は100%で』と言うと、だいたいみんな70%くらいでやるんですが、友太は100%です。細かくは言わないですけど、この友太の頑張りは、若い奴らを説教する時のネタになります(笑)。

 友太からキャプテンマークを巻いている自覚を感じます。(ゲームキャプテンは)試合前後の円陣でひと言喋らなければいけないですし、自分が引っ張っていかなきゃという自覚が明らかに出てきたと思います。プレーの面でも数字に出ていない貢献がある。横浜FC戦でも1点目も2点目も友太が絡んでいます。しかし数字には出ていないし、どちらもアシストはついていないんじゃないかな。数字には出ていないけれど、たどっていくと友太がいます」(森山監督)

 常に仲間のために、勝利のために。身を粉にして戦う郷家選手に、キャプテンマークを受け取った思いやプレーオフを目指す終盤戦について聞いてみた(取材は第37節・ロアッソ熊本戦前に実施)。

Photo: Vegalta Sendai

自分のひと声で、アクションで、何かが変わる。関わる全員を巻き込みたい

――開幕からキャプテンマークをつけていた林彰洋選手が初めて欠場した鹿児島戦。林選手が復帰した次の試合以降も郷家選手がゲームキャプテンを担っています。キャプテンマークをつけた経緯を聞かせてください。

 「直接ゴリさんから話をされて、ということではないんですが、鹿児島戦の試合前ミーティングでモニターに出た僕の名前の横に『CP』と書かれていました。ロッカールーム、僕の席にキャプテンマークが置かれていたので、そこからつけさせてもらっています」

――キャプテンマークをつけた上で、気持ちに変化はありましたか?

 「ゴリさんからのメッセージとして受け取っているつもりです。元々覚悟を持ってやっていましたが、今までアキさんが見てきた景色を僕が見ることによって、周りを見て、もっと巻き込んでやっていくこと。自分のひと声やアクションで何かが変わるということを見せていかなければいけないです。鹿児島戦以降、それは特に強く思っています」

――試合前とハーフタイムに、ロッカールームで円陣を組んで仲間にひと声かけます。あの言葉はいつ、どのように考えていますか?

 「その時思ったことを、そのままみんなに伝えています。事前に考えてはいないですね」

――そのロッカールームでの言葉はベガルタ仙台YouTubeの「広報カメラ」でも多くの人に伝わっています。

 「ロッカーで伝えることは試合に出るチームメートだけに伝えているのではないです。メンバー外の選手も知るし、スタッフやサポーターも“同じチーム”だと思っているので、スタジアム全員、広報カメラを見てくれている人もそうです。選手だけがチームじゃないし、スタッフだけがチームじゃない。全員を巻き込みたいという思いです」

ベガルタ仙台公式YouTubeの「広報カメラ2024 vol.45」。いわき戦前のロッカールームで郷家が言葉を発するシーンは15:27から

毎試合が決勝戦。終盤の厳しいプレーオフ争いで共有する「メンタル」の重要性

――第36節・愛媛FC戦も特に前半は苦しい時間が長かったですね。……

残り:3,820文字/全文:6,413文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

村林 いづみ

フリーアナウンサー、ライター。2007年よりスカパー!やDAZNでベガルタ仙台を中心に試合中継のピッチリポーターを務める。ベガルタ仙台の節目にはだいたいピッチサイドで涙ぐみ、祝杯と勝利のヒーローインタビューを何よりも楽しみに生きる。かつてスカパー!で好評を博した「ベガッ太さんとの夫婦漫才」をどこかで復活させたいと画策している。

RANKING