「純也くんのクロスに感謝」「敬斗はブレずに続けている」中村の5戦連発、伊東のアシスト量産は継続と準備の賜物
Allez!ランスのライオン軍団 #2
大好評のスタッド・ランス取材レポートが連載化! 伊東純也と中村敬斗の奮闘ぶり、欧州参戦を目指す若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする。
第2回は、10月20日のリーグ1第8節オセール戦(●2-1)と26日の第9節ブレスト戦(●1-2)。今季3発目の「伊東→中村」弾や伊東の連続アシストがありながらも、チームは今季初の連敗を喫することになった2試合で、2人は何を思ったのか。
中村が噛み締めた思い「フルで使ってもらえたことにも感謝」
伊東純也はサウジアラビア戦(○0-2)でアシスト、中村敬斗はオーストラリア戦(△1-1)で相手オウンゴールを誘発と、ともに10月の代表戦で得点に絡んだスタッド・ランスの日本人コンビ。彼らがインターナショナルブレイク明けに挑んだのは、昨年リーグ2(2部)で優勝して昇格を決めた古豪オセール。オナイウ阿道が所属するクラブだ。
キャパシティ1万7000人ほどの敵地スタッド・アベ・デシャンはこの日満員御礼。車で2時間半ほどの距離にあるランスからも大挙サポーターが詰めかけ、フランスリーグでは珍しく、アウェイサポーター席も満員の観客で埋まる大盛況となった。
そんなサポーターの熱を受け、ランスの獅子たちも奮闘……したのだが、開始16分にセットプレーからオセールに先制点を許すと、続いて35分に献上したPKはGKイェバン・ディウフが完璧な読みでクリアするも、後半、連係ミスから不運な失点。2点ダウンで時計はアディショナルタイムへと突入した。
しかし、最後まで諦めずに走り続けたランスの執念は、試合終了直前に形になった。立役者はこの2人。伊東の右サイドからのピンポイントのクロスに中村がぴったり頭で合わせ、今季3度目のコンビプレーで一矢報いる1点をもぎ取った。
同点に追いつくことは叶わなかったが、中村はこれで欧州の主要リーグにおける日本人選手の連続得点記録を「5」に更新。
「めっちゃうれしいです。チームの勝利につなげたかったですけど、ラスト1分で、終了間際に決められて。本当にあのゴールは、純也くんのクロスがピンポイントで来て、合わせるだけだったんです。それまでも何度かチャンスがあって、自分なら決め切れたシーンもあったと思うんですけど、たぶん負けていたことで焦る気持ちもあって、いつもなら冷静に切り返していた場面で打ちにいったりとか……。相手の寄せもけっこう集中していて、5バックで固かったんでなかなか点を取れなかったですけど、本当に純也くんのクロスに感謝したいです」
5試合連続、しかも終了間際でのゴール、ということに加えて、中村がこの試合であらためて噛み締めた思いがある。
「昨シーズンだったら、こうした負けている展開の試合で60分、70分で代わっていたところを、4試合連続でゴールを挙げて信頼というのも少しずつ出てきた中で、フルで使ってもらえたことにも感謝したい。それがあったからこそ、ロスタイムでゴールが取れたので」
昨シーズン、中村がフル出場したのは2試合のみ。リードしていても負けていても、70分前後でピッチを退くのがほとんどだった。しかし終了の笛が鳴るまでゴールを追い求めたかったこの試合で、ルカ・エルスナー監督は今シーズン初めて、中村を最後までピッチに残し、望みを託した。中村はその指揮官の思いに応え、終了間際に1点をもぎ取ってみせたのだった。
「そんなに代表で(試合に)出てなかったんで、いけるかな、と思ったんですけど、やっぱり体は重かったです」
こう試合後に話した伊東は、確かにいつもほどのキレはなかったが、今季3アシスト目を記録。
「3アシストとも(ゴールは)敬斗。クロスからいい形で点は取れたと思いますけど、ちょっと遅すぎたかな……」
チーム全体的に重さの見られたオセール戦を、そう振り返った。
84分からはオナイウも投入され、終盤は日本人選手3人がそろってプレー。昨シーズン、クラブ最多の15得点でリーグ1昇格に大貢献したオナイウは、2022-23シーズン以来となる2度目のトップリーグ挑戦に、「(出場機会が安定しなかった)前回のトゥールーズ時代のようなシーズンにはならないように、個人ではそれ以上の結果を出したい」と意気込んでいる。
「シャツを2つ持っていなかったので交換できなかったですけど、2人はチームでも主力としてずっと試合に出ていますし、得点に絡んでいる。2人から盗める部分もあるかもしれない」
試合後のピッチには、わちゃわちゃと談笑する3人の姿があった。
伊東の“ビデオ講座”「ここに入っておいてくれ。そうしたらゴールになるから」
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Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。