鹿島でくすぶった有馬幸太郎が「いわきの10番」として実力を身につけ、二桁得点目前に至るまで
いわきグローイングストーリー第1回
Jリーグの新興クラブ、いわきFCの成長が目覚ましい。矜持とする”魂の息吹くフットボール”が選手やクラブを成長させ、情熱的に地域をも巻き込んでいくホットな今を、若きライター柿崎優成が体当たりで伝える。
第1回では、紆余曲折を経て二桁得点目前まで迫っている「いわきの10番」有馬幸太郎のキャリアをたどる。
いわき加入3年目、覚醒しつつある10番
いわきに在籍する高卒上がりの選手はプロの厳しさを味わい、再びパワーアップを目指していわきに成長を求めてくるケースが多い。
今季18得点をマークしている谷村海那と前線で2トップを組む有馬幸太郎もその一人だ。チーム2番目の得点数の9得点を挙げて、大台の二桁得点まであと1点。いわきの攻撃をけん引するキープレイヤーである。
ポストワークに長け、味方を生かすことができる。無理の利くタイプでもあり、タイトに前を向かせない相手DFにも負けず、駆け上がってくる味方に預けて再びゴール前へ走る姿が象徴的だ。もっと早く二桁得点という大台に乗せられたという心残りもありながら、ゴール前への入り方や志向するサッカーの中で向上していった。
ワンタッチでの得点が多い中、第13節・千葉戦ではコーナーキックから照山颯人(現V・ファーレン長崎)が競り勝った浮き球に対してコースを変えてゴールにねじ込んだ。
チームとして何度も跳ね返されてきた3連勝の壁を乗り越える立役者になる瞬間だった。第21節・山口戦では自陣中央から始めたドリブルから最後はニアサイドを狙った得点を突き刺すなど印象的な得点が目立つ。
その中で自身が選ぶベストゴールは「キャプテンを任された以上は絶対に勝ちたい」と臨んだ第27節の千葉戦。谷村の浮き球のパスを受けて自陣からドリブルを開始。「ボールを受けて運んでいく中で相手を見ながら」駆け引きを制し、股下を狙ったシュートはゴールに吸い込まれた。
いわきがJ2で初めて4連勝を掴もうとする直前の8月12日に入籍を発表。これは田村雄三監督による粋な計らいだったが、有馬はそれに応えて4連勝に貢献。でき過ぎかもしれないが、常に自分と向き合って努力してきた賜物だった。
これまで紆余曲折ありながら、いわきに加入して3年目でようやくサッカー選手として充実の時を迎えることができている。
鹿島、栃木で苦境を経験し、いわきへ
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Profile
柿崎 優成
1996年11月29日生まれ。サッカーの出会いは2005年ドイツW杯最終予選ホーム北朝鮮戦。試合終了間際に得点した大黒将志に目を奪われて当時大阪在住だったことからガンバ大阪のサポーターになる。2022年からサッカー専門新聞エル・ゴラッソいわきFCの番記者になって未来の名プレーヤーの成長を見届けている。