REGULAR

いつでも効いている仕事人が手繰り寄せた「取るしかない」晴れ舞台。アルビレックス新潟・藤原奏哉は熱くしなやかに国立の右サイドを駆け抜ける!

2024.10.29

大白鳥のロンド 第16回

今やJ1有数の右サイドバックだ。アルビレックス新潟に欠かせないハードワーカー、藤原奏哉の存在感が今季に入って一層増していることに、サポーターも異論を挟み込む余地はないだろう。ほとんどの公式戦に登場し続け、攻撃でも守備でもフルパワーで走り続け、チームの勝利に貢献し続ける。そんな男にとっても、やってくる大舞台での決戦はとにかく特別。11月2日、JリーグYBCルヴァンカップ決勝。国立競技場でもオレンジの25番は、前だけを見据えて右サイドを駆け抜ける。

プロになって初のファイナリスト。チームを牽引してきた右サイドバック

 「自分にとっても、チームにとっても初の決勝ですし、それはもう、取るしかないなっていう感じですね」。藤原奏哉は、目前に迫る大勝負に奮い立つ。

 プロ7年目で、手にしたファイナリストの資格。トーナメントの決勝戦は、阪南大2年時の全日本大学サッカー選手権以来だ。そのときはベンチで、関西学院大に0-4で敗れた。卒業した2018年にJ3・ギラヴァンツ北九州でプロになり、2021年に移籍したJ2・アルビレックス新潟で、翌年J1昇格に貢献。そしてJ1で2年目を戦う今季、2024年11月2日、国立競技場で、JリーグYBCルヴァンカップの決勝戦に挑む。

 ここまでのトーナメント8試合中、7試合に出場。「最初の1試合を除いて全部に出ているので、貢献できている気持ちはあります」と胸を張る。7試合の中で印象的なのは、限られた戦力で臨んだ1stラウンド3回戦のブラウブリッツ秋田戦と、プレーオフラウンド第1戦・長崎戦だと言う。「メンバーがギリギリの中での戦いでしたし、連戦で、万全じゃない状況での戦いでした。その中で、(石山)青空とか、(奥村)仁とか、まだ出場機会が少なかった選手が活躍して、難しい試合を乗り越えてきたので、今があると思います」。

 藤原自身も、守備のみならず、得点に関わるプレーで貢献してきた。秋田戦ではパスが決勝点を呼ぶPK獲得につながり、プライムラウンド準々決勝第1戦・FC町田ゼルビア戦では、ボール奪取からゴールの起点に。準決勝・川崎フロンターレ戦の第1戦では、長谷川元希のゴールをアシストしている。

増した責任感。ほとばしる熱量。何より、味方を助けるためによく走る

 藤原は走り続けてきた。試合のピッチを、このタフなシーズンを。

 今季できた個人チャントの歌詞「藤原奏哉、駆け抜けろ」に、背中を押されるように。

 170cmと小柄だが、鍛え上げた体は当たり負けしない強さを持つ。1対1の地上戦では球際で譲らず、広い視野と足元の技術と相手をかわす駆け引きのうまさを見せる。

 何より、味方を助けるためによく走る。……

残り:3,166文字/全文:4,671文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

野本 桂子

新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。24年4月からクラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。

RANKING