ゼルビア・チャレンジング・ストーリー 第17回
町田の名を全国へ、そして世界へ轟かせんとビジョンを掲げ邁進するFC町田ゼルビア。10年以上にわたりクラブを追い続け波瀾万丈の道のりを見届けてきた郡司聡が、その挑戦の記録を紡ぐ。
第17回では、一度は奪い返した首位の座から再陥落して以降、勝利から遠ざかるチームの停滞の原因を究明。逆転優勝へ正念場を迎えたゼルビアに光明は差すだろうか。
起死回生の同点ゴールだった。
先制された直近の柏レイソル戦は“敗色ムード”が漂う中、土壇場で途中出場組が躍動。タイミングをズラしながら両翼と2トップの個性を入れ替えた効果は大きく、藤本一輝が果敢なドリブル突破からPKを獲得すると、黒田剛監督から直々にPKキッカーに指名された下田北斗が冷静にPKで同点ゴールを決めた。
土壇場で追いついてのドローの価値は、評価が分かれる結果だろう。柏戦3日前は別メニュー調整ながらも「ギリギリ」間に合わせた下田は「勝ち点2を失ったと言えるし、1をもぎ取ったとも言える」と語っている。一方で日本代表の望月ヘンリー海輝は、どこか浮かない表情をしていた。
「追いつけたことがすべてかなと。内容も相手の方が良かったですし、自分たちの勢いを発揮できた印象もなかったです。ただ3連敗はまぬがれたので、個人的には最悪を逃れた勝ち点1だと思います」(望月)
望月の冴えない表情は、自身のパフォーマンスにも起因している。柏戦の立ち上がりに望月は自身のボールロストから決定機を作られているため、自戒を込めた気持ちが試合後の反省に表れていたのだろう。それでも対戦相手の視点に立てば、ふがいなかった柏戦を嘆く気持ちにも合点がいく。……
Profile
郡司 聡
編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、エルゴラッソ編集部を経てフリーに。定点観測チームである浦和レッズとFC町田ゼルビアを中心に取材し、『エルゴラッソ』や『サッカーダイジェスト』などに寄稿。町田を中心としたWebマガジン『ゼルビアTimes』の編集長も務める。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド)。マイフェイバリットチームは1995年から96年途中までのベンゲル・グランパス。