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パリ五輪で感じた“世界との差”は強い向上心の源に。サガン鳥栖・木村誠二は「結果を出せる選手」への成長を誓う

2024.10.16

プロビンチャの息吹~サガンリポート~ 第8回

ポテンシャルの高さには以前から定評があった。2024シーズン、4クラブ目の期限付き移籍先となったサガン鳥栖で、それを解き放つための“マニュアル”を手に入れると、目標に掲げていたパリ五輪にも出場。今季の木村誠二は今までと一味違う活躍を披露していると言っていい。降格圏に喘ぐチームの中で、確かな成長を続けている23歳のいまを、杉山文宣に綴ってもらおう。

A代表への想いが増したパリ五輪での大きな経験

 目標としていた舞台を経験し、木村誠二の視線はさらなる高みへと向けられた。今季、サガン鳥栖へと期限付き移籍を決断した中でパリ五輪出場というのは絶対の目標の一つだった。始動直後に負傷離脱。開幕後に復帰するも再び負傷離脱と、新天地でのスタートは思い描いたようなものではなかったが、4月に開催されたU-23アジアカップには間に合うとU-23日本代表の優勝に貢献。帰国後のJリーグでの活躍も評価され、目標だったパリの舞台に立った。

 たどり着いた舞台は木村にさまざまな気づきを与えてくれた。その一つが世界との差だった。

 「特に(準々決勝の)スペイン戦ですけど、個人の能力ではまだ差があるなというのは感じました。大きな差ではないんですけど、まだ届かないのかっていう感覚はありました。決勝トーナメントの最初の試合で0-3という結果で敗れて世界との差は感じましたし、スペインの得点を決めたフェルミン・ロペス選手(バルセロナ)は普段から世界のトップクラスの選手たちと一緒に練習している。Jリーグのレベルが低いとはまったく思わないですけど、現時点でも差があるのに、普段から高いレベルで練習からプレーしている彼らとの差はこのままだと開く一方だなというのは感じましたし、より高いレベルに身を置きたいという気持ちは強くなりました」

パリ五輪準々決勝でスペインの2点目を沈め、日本を突き放したF.ロペス

 世界の舞台に立ち、肌で体感した世界との差。そこで生まれた焦りという名の気づきは向上心へと変わっていった。

 「いまの成長スピードだと遅いし、追いつくのが目標ではなくて追い越すのが目標なので、向こうがあのスピードで走り続けているなら僕はもっと速く走らないといけない。これ以上、上を目指すにはA代表しかないですし、五輪が終わったことで次の目標となれば必然的にA代表になる。いままでは『なれたらいいな』くらいで考えていた部分もありましたけど、『なりたい』と強く思えるようになりました。そこは自分の中での変化だと思います」

スペイン戦の先発メンバー。木村は後列右から2番目

4クラブ目の期限付き移籍先で見えてきた“新しい世界”

 さらなる成長を期す木村だが、今季、鳥栖に来てからの成長は目覚ましいものがある。186cmという高さに加え、分厚い体躯から生み出されるパワーはJリーグの舞台でも日本代表として外国籍選手たちとマッチアップをしても決して見劣りすることはなかった。それでいて、標準以上のスピードも兼ね備えており、生まれ持った素材としての魅力は十分であり、木村自身もそこには少なくない自信を持っていた。ただ、その一方で”後天性“の部分に劣等感を覚えていたのは事実だった。……

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Profile

杉山 文宣

福岡県生まれ。大学卒業後、フリーランスとしての活動を開始。2008年からサッカー専門新聞『EL GOLAZO』でジェフ千葉、ジュビロ磐田、栃木SC、横浜FC、アビスパ福岡の担当を歴任し、現在はサガン鳥栖とV・ファーレン長崎を担当。Jリーグを中心に取材活動を行っている。

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