「本当に、結果がすべてだなって」中村敬斗の“ケチャドバ”と、伊東純也がランスのリーダーたる所以
Allez!ランスのライオン軍団 #1
大好評のスタッド・ランス取材レポートが連載化! 伊東純也と中村敬斗の奮闘ぶり、欧州参戦を目指す若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする。
初回は、リーグ1開幕から全7試合に出場して伊東は2ゴール2アシスト、中村は4ゴール(4戦連発!)1アシストと、ここまで4位(4勝2分1敗・14得点10失点)のチームを今季も牽引する日本代表コンビの序盤戦を、2人の言葉とともに振り返ろう。
「なんでだよ?とも言えなかった」先発落ちからの4戦連続ゴール
10月のインターナショナルマッチウィークは、シーズン前半戦の重要な節目だ。その直前に行われたリーグ1第7節、本拠地でのモンペリエ戦にスタッド・ランスは4-2で勝利し、3位のマルセイユと同勝ち点(14)の4位という好位置でブレイクに突入した。
この試合で1得点1アシストと2点に絡む大活躍で白星に貢献したのが、中村敬斗だ。
スタッド・ランスは開始6分にマーシャル・ムネツィのヘッド弾で先制したが、モンペリエは最下位から2番目という順位に見合わない油断のできない相手。そんな中で中村が25分に決めた2点目は、流れをつかむためにはここらで追加点が欲しい、という絶好のタイミングだっただけでなく、第7節のベストゴール級のスーパーシュートだった。
やや左寄りでボールを受けた中村は、相手ディフェンスが次々に襲いかかる密集地帯を軽快な切り返しですり抜けると、振り抜いた右足から放たれたパワフルなミドルはゴール左隅へ一直線。本人も「けっこうゴラッソだった」と認める会心の一撃だった。
中村の決定的なプレーはこれだけに収まらず、後半の57分には左サイドからゴール前にめがけたクロスでウマル・ディアキテの3点目をお膳立て。ボールはぴったりディアキテの頭上に落ち、あとは押し込むだけ、という見事なアシストだった。
「めっちゃうれしいです。4試合で4ゴール取れているので、波に乗れている感じ」
これで第4節から4戦連続得点。試合後の中村から笑みがこぼれた。
しかしながら、この4連発には、“波に乗る”以上の価値があった。
第4節のナント戦、ルカ・エルスナー監督は、中村をスタメンから外す決断をした。前節までは先発出場して終盤の80分前後までプレー。チームとしても、リールとの開幕戦は0-2で落とすも、次のマルセイユ戦は敵地で2-2と奮闘、そして第3節も難敵レンヌに2-1で勝利と好調だった。
その中で、中村のプレーは決め手となるインパクトには欠けたが、決して悪くはなかった。しかしエルスナー監督は、続くナントとのアウェイ戦で中村を先発から外したのだった。
「前日までスタメンだったのに当日外されたので、けっこう自分としては……。チームとしては前の試合に勝っていて、(そういう時には)メンバーを変えないのが基本線だと思っていたので……」
試合当日に告げられた先発落ちに、納得いかない思いだったのは十分理解できる。
「でも、結局僕は最初の3試合で結果を残していなかったので、代えられて文句というか、なんでだよ?とも言えなかった。だから結果を出すしかなかった」
……
Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。