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2-9大敗を喫したディナモ・ザグレブのその後。過去に囚われず再登板!ビエリツァが演出した救出劇

2024.10.12

炎ゆるノゴメット#10

ディナモ・ザグレブが燃やす情熱の炎に火をつけられ、銀行を退職して2001年からクロアチアに移住。10年間のザグレブ生活で追った“ノゴメット”(クロアチア語で「サッカー」)の今に長束恭行氏が迫る。

第10回では、9月17日のCL初戦でバイエルンに2-9の歴史的大敗を喫したディナモのその後を追う。

「ここ10年で最弱」から2冠に導いたヤキロビッチ前監督

 新たなフォーマットで開幕した今季のCL第1節。ディナモ・ザグレブはバイエルンに「2-9」という歴史的敗北を喫してしまった。1試合9失点は大会新のワースト記録。日本のメディアは荻原拓也のCL初ゴールをもっぱら賛美したが、クロアチア(とその周辺国)のメディアは「恥辱」「惨劇」「面汚し」「不名誉」など、思いつく限りの暴言(周辺国のメディアにとっては“嘲笑”)をクロアチア王者に投げかけた。

 時計の針を昨季にまで巻き戻そう。戦力整備の甘さや主力のスランプが重なり、シーズン序盤から国内外で苦戦を強いられたディナモだったが、ECLラウンド16でPAOKに敗れ、国内戦線に絞った後は連勝街道に乗った。解任危機を何度も乗り越えたセルゲイ・ヤキロビッチ監督はリーグとカップの国内2冠を達成。「ここ10年で最弱のディナモ」と言われながらもライバルのハイデュク・スプリトやリエカを抜き去っての逆転優勝にサポーターは快哉を叫び、17年ぶりに優勝パレードが行われるほどの喜びようだった。
 
 2024-25シーズンは2年ぶりのCL出場に目標を定めたディナモ。予選参加クラブで最多のUEFAポイントを獲得していたことで、本来の2回戦ではなくプレーオフからスタートする「ファストパス」の特典を得た。そのお陰で従来より長めの休暇を選手たちは取得でき、フロントは戦力整備に腰を据えて取り組む。今年3月の会長選でクラブレジェンドのベリミール・ザイエッツが現職を破り、「黒幕」ズドラブコ・マミッチの残党をフロントから一掃すると、フランス市場に通じるマルコ・マリッチが長年空白だったSDのポストに就任。22-23シーズン以前のずさんな経営のツケで緊縮財政を強いられたものの、両者の知見に沿って、層の薄いポジションに的確な補強が重ねられた。

昨季の殊勲者の1人、金子拓郎のバイアウトに際してディナモは所定の買い取り価格からの減額(110万ユーロ→60万ユーロ)を申し出て、それをコンサドーレ札幌が拒否したため、金子はローン満了で退団。ウインガーはクロアチア現役代表のマルコ・ピアツァ(移籍金75万ユーロ)、21歳のコロンビア人フアン・コルドバ(移籍金210万ユーロ)で穴埋めしている

 8月2日のクロアチアリーグ開幕戦でイストラを5-0で一蹴したディナモは、その後も破竹の勢いで勝ち進む。CLプレーオフの相手はアゼルバイジャンの刺客、カラバフだったが、内容以上の得点差(トータルスコア5-0)で退けた。8月の公式戦は実に6戦6勝。「国内4強」と並び称されるハイデュク、リエカ、オシエクは、いずれもECL予選で悪夢のような敗退を喫している。10クラブで構成されるクロアチアリーグは8月末の時点で「1強9弱」とささやかれ、ディナモのリーグ優勝に早くも当確ランプが灯された。

2戦13失点の「ブラックホール」突入で大本命に白羽の矢

 ところが、9月に入った途端にディナモは「ブラックホール」に吸い込まれてしまう。……

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Profile

長束 恭行

1973年生まれ。1997年、現地観戦したディナモ・ザグレブの試合に感銘を受けて銀行を退職。2001年からは10年間のザグレブ生活を通して旧ユーゴ諸国のサッカーを追った。2011年から4年間はリトアニアを拠点に東欧諸国を取材。取材レポートを一冊にまとめた『東欧サッカークロニクル』(カンゼン)では2018年度ミズノスポーツライター優秀賞を受賞した。近著に『もえるバトレニ モドリッチと仲間たちの夢のカタール大冒険譚』(小社刊)。

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