背番号7、“黄金をまとう中島元彦”がこれほどまでに仙台で愛される理由
ベガルタ・ピッチサイドリポート第18回
千葉直樹、関口訓充、そして、奥埜博亮。クラブ史に名を刻むレジェンドばかりが背負ってきた、ベガルタ仙台にとって特別な“背番号7”。この番号の4人目の継承者に昨シーズンから指名されているのが中島元彦だ。小柄な体に高性能エンジンを搭載したアタッカーのプレーは、いつだって爽快の一言。その存在感は森山佳郎監督やサポーターを魅了し続けている。そんな愛される7番の素顔をあぶり出すべく、おなじみの村林いづみにいろいろな角度から迫ってもらおう。
クラブにとって“特別な背番号”。ベガルタ仙台は「7番」だ!
サポーターは、背番号に夢を見る。どのクラブにも“特別な背番号”はあるだろう。セレッソ大阪なら「8番」、ジュビロ磐田では「9番」、川崎フロンターレでは「14番」も期待をかけられる番号だろう。またチームの中心である「10番」の価値は言うまでもない。
ベガルタ仙台における特別な番号、それはきっと「7番」だ。クラブの前身、ブランメル仙台時代を知り、「ミスターベガルタ」と呼ばれた地元出身、生え抜きの千葉直樹さん。下部組織出身で仙台大学を経由し、トップチームに加入した奥埜博亮選手(現・セレッソ大阪)、そして関口訓充選手(現・南葛SC)。現「背番号7」を除いて、このナンバーを付けた選手は、仙台で3人しかいない。それほど重要な番号を、昨季から身に着けることになったのが、中島元彦選手だ。
ちなみにベガルタ仙台では梁勇基さん(現・ベガルタ仙台クラブコーディネーター)や財前宣之さんに象徴される「背番号10」も、また菅井直樹さん(現・ベガルタ仙台アカデミースタッフ、スカウト担当)のように「なぜゴール前にいるかわからないけれど、そこにいる25番」も、それぞれ歴代4人。他の背番号を担ってきた選手より圧倒的に少なく、またそれだけ長い期間、責任を持ってその番号を背負ってきた存在がある。こうした個性豊かな選手たちが中心となり、今年創設30周年を迎えたベガルタ仙台の歴史を形作ってきたことも、また感慨深い。
始めは2022年、シーズン途中にC大阪からの育成型期限付き移籍。その後、期限付き移籍を延長して仙台で3年目のシーズンだ。これほどまでにも愛される選手は、このところのベガルタ仙台ではなかなかいない。「仙台に家を買うならクラウドファンディングでいくらか出してもいい」。サポーターは口々にそんなことを話す。その目は真剣だ。「ファン感謝の集い」でも、中島選手のサイン列は途切れることがなく、どこまでも続いた。その際、かなり多くのサポーターに「完全移籍」を願う言葉をかけられたという。
「モトは常に相手にとって嫌なことができる。言われたことだけではなく、『こっちの方がいいんじゃないか』という視点を持っています。移籍してしまった長澤(和輝選手/ウェリントン・フェニックスFC)は優等生的なリーダーでしたが、モトは近所にいる“ガキ大将”的なリーダーかな。それがうちのチームに欠けている要素だからこそ、存在意義は大きいです。大事なところでチームを助けるゴール、アシストをする。決めてくれる、頼れる奴です。ちょっと悪い男でもあります」と森山佳郎監督。気になる最後の文言については、ゴリさんらしく昭和感たっぷりに解説してくれているので、文末で後ほどご紹介しよう。長くなるから、それは後で。殊勲のゴールを上げた第33節・レノファ山口FC戦の翌日、クールダウンを終えた中島選手が芝の上に座って、最近の思いやできごと等、いろいろな話を聞かせてくれた。
「ゴールもアシストも両方する選手だからこそ、もっと突き詰めたい」
――今シーズンは山口戦のゴールで12得点目。キャリアハイを更新し続けていますね。
「今年の最初はセットプレーでキッカーをしていました。自分が中に入った方が結果を残せそうだなと思いました。それをスタッフに伝えて、キッカーから、中で合わせる方に移りました。キッカーをしていたらアシストがもっと増えていたと思うし、去年していたアシストの分が得点に変わったという感じだと思います。こんなちっちゃい奴がCKをポンポン決められると相手も思わないやろうから。自分でもびっくりしていますけどね」
――山口戦の決勝点は本当に見事なゴールでした。鎌田大夢選手からのCK、ニアでドンピシャのヘディングでしたね。
「ヘディングは好きやし、この辺に来そうだなというのは予測できました。自分が蹴っていた人やから、場の空気感やタイミング。キッカーをしてたからこそわかります。その場所に入っていたら、ボールが来て決められているという感じです」
――試合後のインタビューも熱かったと話題になっています。山口まで駆けつけたサポーターをねぎらい、「僕たちのサッカーを見に来てくれているのは、時間もお金も使ってくれている。そういう人たちのために勝ち点3を取りたかった」と。こういうことは、思っていてもなかなか言葉で伝えられなかったりします。
「良かったです。はい(恥ずかしそうに)」
――インタビューを終えて、自分の応援歌を歌うサポーターの元に向かいました。あの歌を聞く時の気持ちは?
「仙台のチャントで一番好きなのは俺の歌です。本当に盛り上がる歌ですし、嬉しかったですよね。みんなも手拍子しながら迎え入れてくれて『活躍できたんだ。サッカーやってきて良かった』という瞬間でもありました」
――第32節のヴァンフォーレ甲府戦では、中山仁斗選手へのアシストも見事でした。今、決める側でもアシストする側でも力を発揮できていますね。……
Profile
村林 いづみ
フリーアナウンサー、ライター。2007年よりスカパー!やDAZNでベガルタ仙台を中心に試合中継のピッチリポーターを務める。ベガルタ仙台の節目にはだいたいピッチサイドで涙ぐみ、祝杯と勝利のヒーローインタビューを何よりも楽しみに生きる。かつてスカパー!で好評を博した「ベガッ太さんとの夫婦漫才」をどこかで復活させたいと画策している。