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6戦未勝利→2連勝の陰に瀬沼優司と岩上祐三の献身あり!相模原が復調の先で突き詰めていく“細部”の正体

2024.09.27

相模原の流儀#8

2023シーズンにクラブ創設者の望月重良氏から株式会社ディー・エヌ・エーが運営を引き継ぎ、元日本代表MFで人気解説者の戸田和幸を指揮官に迎えたSC相模原。新たに築き上げた“エナジーフットボール”の礎を2024年6月より引き継ぐシュタルフ悠紀監督の下でJ2復帰を目指す中、“緑の軍団”が貫く流儀に2021年から番記者を務める舞野隼大氏が迫っていく。

第8回では6戦未勝利のチームを陰でも支え続け、一転して2連勝へと導いた瀬沼優司と岩上祐三の知られざる献身について。

ベンチ外から7戦ぶり勝利の立役者へ。瀬沼の逆襲劇

 J3第29節・FC今治戦で2連勝を収め、昇格プレーオフ圏内の6位に再浮上する復調をみせたSC相模原。それまでは6試合勝ちなしとトンネルを経験したが、そんな苦しい時にこそベテランの献身が際立った。特に戸田和幸前監督もプロフェッショナルな姿勢に一目を置いていた昨季途中加入のキャプテン・瀬沼優司、副キャプテン・岩上祐三のピッチ内外での貢献は大きなものだった。

 瀬沼は白星が遠のいていた間、メンバーから外れることもしばしばあった。それでも前指揮官が「ピッチ内外で若い選手にプロフェッショナルな姿勢を示して、引っ張ってきてくれた」と認めていた彼のメンタリティは不変。シュタルフ悠紀リヒャルト監督も「キャプテンシー、リーダーシップはオフ・ザ・ピッチでも計り知れない価値がある。僕が今まで付き合った選手の中で最もプロフェッショナルな選手と言っても過言ではない」とその人間性を高く評価していた。

練習でチームの中心に立つ瀬沼(Photo: Chiume Ito)

 敵地で行われた第25節・ヴァンラーレ八戸戦ではベンチメンバーから漏れてしまったが、サポートメンバーとして帯同。チームメイトのウォーミングアップを手伝った。ピッチに立てず、いち選手として悔しい気持ちは当然ある。それでも、「本人は快く引き受けてくれて、試合前には非常に熱いスピーチをしてくれた」(シュタルフ監督)と置かれた立場でできることを探しながら裏方に徹した。

 「一番はメンバー入りを勝ち取ってもらって帯同してほしいですけど、惜しくもこぼれてしまった時は今後もサポートメンバーとして来てもらう可能性がある」。指揮官がそう話していた次のアウェイゲームとなった第28節・FC岐阜戦にも瀬沼の姿があった。今度は戦力として約3カ月ぶりの先発起用に応えるため、遠征のメンバー入りを果たしていた。

 「ここ数試合は(6試合も勝利ができず)チームにとって苦しい試合が続いている中、個人としてもメンバーには入れないこと続いていました。でも、出られないなら出られないなりの役割があると思ってずっと行動してきましたけど、今日はスタートから出られるチャンスが巡ってきたということで、自分のやるべきことを徹底して、なんとかこの状況を打破したい気持ちで試合に臨みました」(瀬沼)

 その言葉通り、34歳はチームを窮地から救った。36分に先制点を許してしまい悪い流れに陥りそうになった直後の38分。左サイドからクロスが入ると、瀬沼は相手GKと競り合いながら頭でゴールを決め、試合を振り出しに戻した。

 瀬沼は「クロスの入り方と駆け引きの中で相手の前に入ることを今週は意識づけして、準備してきた」と戦術理解の高さと、求められたタスクをしっかりと遂行できる強みを発揮した得点。そして、チームは90分に植田啓太がミドルシュートを決めて終盤に勝ち越し。2-1で7試合ぶりの勝利を手にすることができた。

「チームの基準を引き上げる」岩上の練習でのワンプレー

 そしてもう1人、日頃から泥臭いプレーで競争力を底上げしてきた見本が岩上だ。……

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Profile

舞野 隼大

1995年12月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。大学卒業後に地元の名古屋でフリーライターとして活動。名古屋グランパスや名古屋オーシャンズを中心に取材活動をする。2021年からは神奈川県へ移り住み、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』で湘南ベルマーレやSC相模原を担当している。(株)ウニベルサーレ所属。

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