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5大リーグの中で異色のセリエA、チアゴ・モッタのユーベは「寄り切りサッカー」で勝ち切れるか?

2024.09.18

新・戦術リストランテ VOL.33

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第33回は、ボローニャを躍進させた注目の若手監督チアゴ・モッタが就任したユベントス。セリエA・4試合でいまだ無失点という守備のメカニズム、その反面、攻撃で決め手を欠く課題について考察してみたい。

セリエA、唯一の無失点

 欧州リーグ序盤戦は特にサプライズのない順位になっています。

 プレミアリーグは4試合終わった時点で全勝のマンチェスター・シティが首位。3勝1分のアーセナルが続いています。

 リーガは攻撃力大爆発のバルセロナがトップ、5戦全勝。意欲的補強のアトレティコ・マドリーと、ムバッペ加入もまだ最適解探索中のレアル・マドリーが2位に並びます。

 ブンデスリーガはバイエルンが3戦全勝。リーグ1もパリ・サンジェルマンが4戦全勝。ポルトガルはスポルティング、オランダはPSV。

 強そうなところが相変わらず強いという何の波乱もない序盤戦の中、唯一ちょっと変化があるのがセリエAです。首位はウディネーゼ、1ポイント差で2位ナポリ、さらに1ポイント差でインテル、ユベントス、トリノです。

 ただ、得失点差で見るとウディネーゼは+3、ナポリ+5、インテルとユーベが+6、トリノ+2となっていて、得失点差ではインテルとユベントスがトップになります。そして4試合で唯一の無失点がユベントスです。

 もうこれだけで、ユベントスがどんなサッカーをしているのか大体察しがつこうというものですが、実際その通りでして、これでいいのか?と思う半面、現状の結果はおよそこれで良いんじゃないかと思わせるものがあります。

守り方は完全ゾーンの「クローズ」

 4試合無失点の守備力が光ります。フォーメーションは[4-2-3-1]です。特徴は[4-2-3-1]のまま守備をすること。

 そんなの当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、多くの場合[4-2-3-1]は守備で[4-4-2]になります。ところが、ユベントスは[4-2-3-1]のままです。そしてボールサイドに全体が移動して、いわゆる「クローズ」みたいな守り方をします。フィールドの横半分にフィールドプレーヤー10人が入ってしまう感じ。

 2列目の3人とボランチ2人の計5人が台形を形成し、そのまま等間隔を維持しながらボールとともに移動していきます。完全にゾーンだからです。起用する選手はけっこう入れ替わっているのですが、この守り方は一貫しています(図1参照)。

図1

 新加入選手が出揃った第4節エンポリ戦が、おそらくベストメンバーなのかと思いますので、この試合のメンバーで説明していきます。……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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