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守備固めトレンドと最大火力の[3-4-2-1]。アジアで日本が「一人勝ち」している戦術的な必然

2024.09.11

新・戦術リストランテ VOL.32

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第32回は、W杯アジア最終予選で他の強豪国が軒並み苦戦する中で、日本のみが2連勝、12ゴール0失点という「一人勝ち」している理由を、戦術的な観点から考察してみたい。

2試合12ゴールの破壊力

 中国に7-0、バーレーンに5-0。2試合12ゴールの破壊力。日本代表がアジア3次予選で圧倒的な強さを見せつけています。

 一方、グループCのライバルと目されていたサウジアラビアはホームでインドネシアに1-1、アウェイの中国戦は退場者を出しながら辛くも2-1。オーストラリアはホームでバーレーンに負け(0-1)、アウェイのインドネシア戦も引き分け(0-0)。何とグループ5位に沈んでいます。

 他のグループを見ても、韓国は初戦でパレスチナに0-0。アジアカップ連覇のカタールは北朝鮮にドロー、UAEに負けでグループAの5位。オーストラリアと同じ状況ですね。2戦2勝しているのはグループAのウズベキスタン、イラン、グループCの日本の3カ国ですが、ウズベキスタンとイランの得失点差は2、日本は12です。

 まだ2試合やっただけではありますが、アジアの強豪が苦戦している中、日本だけが無関係に爆勝しています。

アジア「9」枠で、番狂わせが増えた理由

 なぜ日本だけが突出して強いのか。その前に強豪が苦戦している理由を推測するに、今予選のレギュレーションが関係していると思われます。

 本大会の出場国が増えたのに伴い、アジア枠は最大9に倍増。現在行われている3次予選のグループ1、2位はストレートイン。残り3枠のうち2枠は3、4位によるプレーオフ(4次予選)で決定。さらに5次予選もありまして、それに勝つと大陸間プレーオフに出られます。大陸間に勝てばアジア9位が本大会に進めるという仕組みですね。

 つまり、3次予選のグループ4位でも本大会に出られるかもしれない。今までなら望みの薄かったチームにもチャンスがあるわけで、これまでとはやる気が違う。ある意味、強豪に勝つ必要はないので、得失点差に響かないようになるべく失点しない戦い方を選択しています。すると、インドネシアはサウジアラビア、オーストラリアに引き分け。バーレーンはオーストラリアに勝てた。逆に言えば、強豪国が固められた守備を攻略できなかったということです。

北米W杯アジア最終予選初戦、オーストラリア対バーレーンのハイライト動画

 日本と対戦した中国、バーレーンも守備を固めてきました。しかし結果は大量失点。日本の攻撃力は別格でした。

最大火力の[3-4-2-1]が守備固めにはまる

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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