[3-4-2-1]の旗手、新世代の名将アモリムが仕込んだスポルティングの緻密なメカニズム
新・戦術リストランテ VOL.31
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第31回は、日本代表の守田英正が所属するスポルティングの戦術にフォーカス。ポルトガルの名門を復活させた39歳のアモリムは欧州レベルでも注目される新世代監督だが、彼が仕込んだ[3-4-2-1]の緻密なメカニズムを読み解く。
欧州でも勢力拡大中の[3-4-2-1]
リーガ・ポルトガルは第4節でスポルティングとFCポルトの首位攻防戦がありました。結果は2-0でホームのスポルティングが勝利。これで4戦全勝です。2位がFCポルト。ベンフィカは7位と出遅れています。
昨季、3年ぶりにリーグ優勝したスポルティングですが、その前の優勝は19年ぶりでした。そしてこの4シーズンで2度の優勝をもたらしたのがルベン・アモリム監督です。
アモリムはまだ39歳と若い監督ですが、3部のカーザ・ピアで指導者のキャリアを始め、ブラガBからブラガ、そしてわずか2シーズンでスポルティングの監督に到達しています。その間、勝率は70%以上。これはかなり凄い数字です。
スポルティングはポルトガル3強の1つです。ベンフィカ、FCポルト、スポルティングですね。数々の名選手を輩出していて、一番有名なのはクリスティアーノ・ロナウドですが、他にもルイス・フィーゴ、パウロ・フットレ、シモン・サブローサ、リカルド・クアレスマがプレーしています。こうして列挙するとウイングばっかり。まあ、ポルトガルは名ウイングの産地なわけですが、現在のスポルティングにはウイングがいません。
システムは[3-4-2-1]。数年前まで欧州ではわりと珍しいシステムでしたけど、現在はけっこう増えました。
Jリーグではミハイロ・ペトロヴィッチ監督がサンフレッチェ広島を率いてから流行り出していましたから、欧州より日本の方が馴染みのあるシステムです。欧州では昨季ブンデスリーガで無敗優勝したレバークーゼンが[3-4-2-1]でしたし、ブライトンからマルセイユに移ったロベルト・デ・ゼルビ監督もこれ。アタランタもそうですね。代表チームでもデンマーク、ハンガリー、スイスなど中堅国に多いシステムになっています。
ベースは明確な「型」があるポゼッション
アモリム監督のスポルティングの特徴はポゼッションだと思います。……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。