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フリック・バルセロナの新しい色。バイエルン時代とは異なる「中央飽和攻撃」

2024.08.28

新・戦術リストランテ VOL.30

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第30回は、ハンジ・フリックが新監督に就任したバルセロナの新しい色、バイエルン時代とは異なる「中央飽和攻撃」のメカニズムについて掘り下げたい。

中央でオーバーロードを作る狙い

 ハンジ・フリック新監督のバルセロナがリーグ戦連勝スタートとなっています。ドイツ人監督を迎えてのバルセロナがどう変わったのかを見ていきましょう。

 この夏に獲得したダニ・オルモの登録がリーガ第2節時点では間に合っておらず、EURO2024やパリ五輪を決勝までプレーした選手が何人もいて、まだ戦列が整っていない状態ではありますが、新監督になってからの変化はすでにプレシーズンマッチの段階から出ていました。

 フォーメーションは[4-2-3-1]ですね。[4-1-2-3]にも見えますが、そのへんはそれほど重要ではないと思います。明確な変化は中央を使った攻撃です。図式的に表すとこんな感じ(図1)。

図1

 レバンドフスキ、ラフィーニャ、フェラン・トーレスが中央に集まります。ここで数的優位を作れれば、素早いショートパスでの突破を狙います。相手が集まってきたらサイドが空きますから、サイドへ捌いていく。第2節アトレティック・ビルバオ戦では右がヤマル、左はSBバルデが幅を取っていました。

 中央のオーバーロード(人数集中)に関しては、プレシーズンではボランチの1人と右ウイングも加わっていたので人数の多さが際立っていました。しかし、この試合でのペドリはそこまで前には行っていませんし、ヤマルは基本的に右に張っています。

 前半はペドリが左のインサイドハーフに上がり、ラフィーニャが右側という[4-1-2-3]だったのですが、途中からフェランが中央へ入ってきています。飲水タイムから変わった感じなので指示があったのかもしれません。

 これは飲水前ですけど、GKテア・シュテーゲンから中央に入ったフェランにつなぎ、ラフィーニャに当ててフェランが裏へ抜け出すチャンスがありました。フェランがファウルされて止まったのですが、そのまま抜け出せばGKとの1対1でした(図2)。……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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