在籍8年目の頼れるキャプテン。アルビレックス新潟・堀米悠斗が兼ね備えるロジックとパッション
大白鳥のロンド 第14回
J1昇格2年目。今シーズンのアルビレックス新潟は、夏前までなかなか結果が付いてこなかったものの、少しずつ戦線復帰してきた選手たちの躍動もあって、ここ5試合は無敗をキープ。1ケタ順位に食い込む勢いを見せ始めている。そんなチームにあって、在籍8年目となる堀米悠斗の存在感は語り落とせない。橋本健人、稲村隼翔という若きライバルの台頭もエネルギーに、チームの成長を常に考えているキャプテンのいまを、野本桂子が考察する。
僅差の上位と下位。まだまだ油断は禁物
残り10試合を前に、1ケタ順位が見えてきた。
アルビレックス新潟は、明治安田J1リーグ第28節でFC町田ゼルビアと戦い、0-0で引き分けた。試合終了時点で、勝点は36。リーグ12位につけている。
J1昇格2年目となる今季は、昨季から選手22人が契約を更新し、新たに8人を迎えた精鋭30人体制でスタートした。4月から6月にかけては、カップ戦も含めた連戦が続く中で、ケガ人が続出。一時はベンチ入りぎりぎりの人数で戦っていたこともある。その間、順位は16位から14位を行ったり来たりと、なかなか上昇の波に乗れなかった。
それでも特別指定選手の力も借りながら戦い抜き、7月からは傷が癒えた選手たちが続々と合流。徳島ヴォルティスから橋本健人も加わり、早速出場も果たした。直近5試合は、今季初の2連勝を含む負けなしで、勝点11を積み上げている。
上を見れば、7位から10位までは勝点38の4チームが並び、新潟との差は「2」。次節、勝てば一気に7位浮上の可能性もある。一方で、16位・柏レイソルとの勝点差は「3」。結果次第では逆の立場にもなり得る。力が拮抗したリーグで、まだ油断する暇はない。
改善と修正。効果が表れ始めた守備の向上
その中で、新潟は直近3試合連続でクリーンシートを達成。新潟の主将・堀米悠斗は「勝点1の重みが徐々に増していく時期だし、失点を減らすのはすごく大事になってくる。そういう意味では今日、すごく意味のあるゲームができた」と、得点ならずも無失点に押さえきった第28節・町田戦の意義を噛み締めた。
勝点を積み上げ続ける中で課題に向き合い、修正をかけてきた。
第24節・セレッソ大阪戦(○2-1)と第25節・ジュビロ磐田戦(△2-2)は、いずれも2−0でリード。しかし2試合連続でアディショナルタイムに失点し、磐田戦では勝点2を失った。
続く第26節・京都サンガF.C.戦(○2-0)では、それまでの反省を生かして無失点締め。ただ相手のハイプレスとマンマークで攻撃が少し停滞した点は、次への課題となった。
そして第27節・アビスパ福岡戦(○1-0)で、今季初連勝を経験。第28節・町田戦では、首位を相手に球際のバトルで譲らず、0-0で引き分け、3試合連続完封とした。
守備が改善された理由について、堀米はこう話す。「あの(終盤の)時間に、悔しい思いを何度もしてきたので、全員、やられてはいけないという意識が上がりました」。
今季はJ1第4節・東京ヴェルディ戦、第19節・川崎フロンターレ戦でも、2-1のアディショナルタイムに失点し、勝点3が勝点1になっていた。天皇杯2回戦・ギラヴァンツ北九州戦でもアディショナルタイムに4-4の同点にされ、PK戦にまでもつれた。
「やっぱりサッカーって、意識で変わる部分も多くあると思う。気持ちの問題じゃないという意見もあると思いますけど、『負けたくない』という気持ちを、あと1歩の寄せだったり、あと1歩の戻りだったりに表現できるかというところは、すごく大事だと思うので。チームのために走り切るという部分は、ここ数試合、すごくいいものが出ていると思います」……
Profile
野本 桂子
新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。24年4月からクラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。