REGULAR

ウイングのオフ・ザ・ボール10種から解明する、プレミアリーグ注目クラブの攻撃戦術

2024.08.25

TACTICAL FRONTIER~進化型サッカー評論~#7

『ポジショナルプレーのすべて』の著者で、SNSでの独自ネットワークや英語文献を読み解くスキルでアカデミック化した欧州フットボールの進化を伝えてきた結城康平氏の雑誌連載が、WEBの月刊連載としてリニューアル。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つ“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代フットボールの新しい楽しみ方を提案する。

第7回は、データ分析会社『SkillCorner』が定義する10種類のオフ・ザ・ボールから、プレミアリーグ注目クラブの攻撃戦術をウイングのオフ・ザ・ボールに注目して分析してみたい。

 ヨハン・クライフの残した金言は、多くの指導者や選手たちの価値観を変革してきた。次の言葉は、特に多くの人々にとって衝撃だったに違いない。

 「試合において、選手がボールに触るのは約3分だ。つまり、最も重要なのはそれ以外のボールを持っていない87分間に何をするか。それこそが、一流の選手とそれ以外を区別するものだ」

 ボールを保持していない時間に、多くの情報を集める選手として知られるのがリオネル・メッシだ。アルゼンチンの天才はゲーム開始時は所在なく動きながら周りを観察し、相手の守備組織がどのように組織されているかを分析している。ボールを保持していない選手たちのランは、これまでのデータでは分析が難しい領域だった。しかし、データ分析の進歩、特にトラッキングデータ収集が容易になったことにより、この領域のデータ分析は飛躍的なレベルアップを遂げつつある。リバプールではデータ分析の傑物ウィリアム・スピアマンによって、オフ・ザ・ボールの能力を数値化することが可能になった。特にリバプールのようにトランジション局面が多いチームでは、味方がどのコースに、どのタイミングで走るかが重要になる。

 今回はデータ分析会社である『SkillCorner』がオフ・ザ・ボールの種類を定義したデータをベースに、特にワイドの選手に絞った「オフ・ザ・ボール」の動きからチームの戦術的特徴を探ってみたい。

データ会社が定義する10種類のオフ・ザ・ボール

 まず、チームがボールを保持している局面でのオフ・ザ・ボール・ランは、次のような特徴を持っている必要がある。

 「少なくとも、0.7秒は持続しているランであること」

 「ランのスピードは、4.2m/秒(15km/時間)よりも速いこと」

 この前提の上で『SkillCorner』が定義する10種類のオフ・ザ・ボールを紹介したい。

・ドロッピング・オフ

 選手は自陣側に走ることで、味方がパスしやすい角度や位置に移動する。それによって、チームのボール保持をサポートする目的のランとなる。ショートパスを受けるために、プレッシングを狙う相手との距離を広げようという意図がある。……

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Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

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