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前半AT34分、10人で苦闘…伊東純也と中村敬斗の「めちゃくちゃきつかった」開幕戦レポート

2024.08.18

おいしいフランスフット #7

1992年に渡欧し、パリを拠点にして25年余り。現地で取材を続けてきた小川由紀子が、多民族・多文化が融合するフランスらしい、その味わい豊かなサッカーの風景を綴る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第7回(通算165回)は、強行軍のジャパンツアーを経て8月17日、スタッド・ランスがホームで迎えた新シーズン開幕戦を、伊東&中村の談話とともにレポート。

開始早々に緊急搬送…ゴメスに贈るリールの勝利

 パリオリンピックが8月11日に閉幕したのと入れ替わるように、16日金曜のル・アーブル対パリ・サンジェルマンを皮切りに、フランス・リーグ1の2024-25シーズンが開幕した。

 今季はスタッド・ランスの伊東純也と中村敬斗、モナコの南野拓実、そしてリーグ2から復帰を遂げたオセールのオナイウ阿道と、日本人選手4人が参戦する。毎節見どころ満載のシーズンになることだろう。

 その中で先陣を切ったのは、8月17日19時キックオフのリール戦に臨んだランスの2人。さっそく初陣から強豪相手のゲームとなったが、新たに着任したルカ・エルスナー監督の下、伊東と中村はそろって先発出場。右サイドに伊東、左サイドに中村が陣取った。

スタッド・ランス対リール、試合前の選手入場シーン(Video: Yukiko Ogawa)

 ところがこの試合が予想だにしなかった展開に。開始11分、ランスのMFアマドゥ・コネとリールのMFエンジェル・ゴメスが衝突。ゴメスは地面に倒れた後、意識を失っていた模様で、ピッチ上での手当てが続き、試合は30分以上中断された。

 両軍の選手たちも不安げにゴメスを見守っていたが、病院に運ばれる手はずが整い出したところで、冷えた体を温めるべくウォームアップを開始。再開となった時点でノーマルタイムの45分が過ぎていたため、アディショナルタイム34分、という異例のリスタートとなった。

 が、コネは退場処分となったため、ランスは強豪相手に残り80分を10人で戦うという厳しい状況に。試合は前半終了間際にセットプレーからリールが先制。そして後半のアディショナルタイム、キリアン・ムバッペの弟で今夏パリ・サンジェルマンから加入したエタン・ムバッペのアシストを受けて、カナダ代表FWジョナサン・デイビッドがゴール至近距離からねじ込み、0-2でリールの勝利に終わった。

 この勝利は負傷したゴメスに贈られ、試合後にはランスのメンバーがリールサポーターのスタンドまで歩み寄って、両軍で健闘を称え合うという感動的なシーンも見られた。

 マンチェスター・ユナイテッド出身の23歳で、リールに移籍してから大きく評価を上げているゴメス。無事に回復して、また元気な姿をピッチで見せてくれることを心から祈りたい。

試合後リールのサポーターに挨拶するスタッド・ランスのメンバー(Photo: Yukiko Ogawa)

「ああいうワンチャンスをしっかりものにできていれば…」(伊東)

……

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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