サウダージの国からボア・ノイチ 〜芸術フットボールと現実の狭間で〜 #7
創造性豊かで美しいブラジルのフットボールに魅せられ、サンパウロへ渡って30年余り。多くの試合を観戦し、選手、監督にインタビューしてきた沢田啓明が、「王国」の今を伝える。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第7回(通算185回)は、欧州王者レアル・マドリーの攻撃陣に今夏、ムバッペとともに加わった期待の18歳と、かつて同様に若くして鳴り物入りで渡欧したブラジル人FWたちの挑戦について。
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2022年12月、まだ16歳5カ月だった時点で、パルメイラスから推定6000万ユーロ(約96億円)という移籍金で将来のレアル・マドリー入りが決まり、昨年11月にはセレソン(ブラジル代表)に初招集されたCFエンドリッキが7月21日、18歳の誕生日を迎えて正式に“白い巨人”に加わった。
その1週間後、本拠地サンティアゴ・ベルナベウで入団セレモニーが行われた。4万人を超えるファンを前にして「子供の頃から、このクラブでプレーするのが夢だった。言葉にできないほどうれしい」と感涙。翌日、チームとともにプレシーズンのアメリカツアーへ出発した。
そして7月31日、シカゴで行われたミラン戦でいきなり先発。ブラヒム・ディアスとの2トップで、前半12分、ゴール前でブラヒムからパスを受けてシュートを放ったが、判定はオフサイド。その後、左サイドからブラヒムへ絶妙のパスを送ったが、ブラヒムのシュートはゴールの枠を外れた。この試合は、前半だけで交代した。……
Profile
沢田 啓明
1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。