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“一家に一台、髙田椋汰”。森山監督が太鼓判を押すタフネスと期待に応える力

2024.08.06

ベガルタ・ピッチサイドリポート第16回

そのポリバレントさと明るいキャラクターで、加入初年度の24歳が杜の都のサポーターの心をしっかりと掴んでいる。ブラウブリッツ秋田でルーキーイヤーを過ごしたのは昨年のこと。まだプロ2年目のサイドバック。ベガルタにとっては縁浅からぬ宮崎県延岡市出身の髙田椋汰が、チームの中で放つ存在感は絶大だ。今回もおなじみの村林いづみが、森山佳郎監督も認める元気印のいまに迫る。

 プロ2年目の新加入選手。何かと話題を提供してくれる選手だなぁと思う。左右のサイドバック(SB)で活躍したかと思えば、ロングスローも投げる。ベガルタ仙台が24年間、開幕前のキャンプでお世話になっている宮崎県延岡市出身。プロ初ゴールも含め、アウェーで決めるゴールは、なんだかいつもスーパー。試合に勝ったら、サポーターの前で誰より先に「勝利のダンス」を踊り出すチームのメインダンサー。こうなると陽気なお調子者かと思いきや、話せば責任感たっぷりの実直な男。それもそのはず、阪南大学の副キャプテン。仲間にもサポーターにも愛される「背番号2」は引き出しの多い選手なのだ。

Photo: Vegalta Sendai

 今回は森山佳郎監督の選手評からお届けしていきたい。リーグ戦の中断前、ベガルタ仙台は「空前のSB不足」に見舞われていた。開幕から左SBを務めていたルーキー石尾陸登選手がけがで離脱。同ポジションを務める内田裕斗選手もけがから復帰したものの、再びリハビリ組に入ってしまった。右SBを主戦場とする髙田選手が左SBとしてプレーする試合もあった。

 「チームの中では一番たくましいタイプかな。チーム事情もあって、第24節の徳島(ヴォルティス)戦以外は全て出てもらっています。でも徳島戦の前にイエローカードをもらって……。今、SBがいなくて大変!という時に、出場停止になったので大変でしたけどね。SBにはけが人が相次いで、髙田には右に行ったり、左に行ったりしてもらいました。あるいは真ん中に入ってもらったりしました。

 どんな状況でも、頭も心も体も、ある一定の状態でいてくれる。選手によっては体力面や精神面で疲れが出てくる選手もいるんですが、あいつだけは常に一定。“鈍感力”なのかな?わかりませんが、たくしましいですよ。浮き沈みがなく、高いレベルで安定して戦ってくれる。頼りにしています。人がいないところに髙田を回すというところがあります。もちろん、左SBは得意ではないと思うし、センターバックも本人は『えっ?』って感じかもしれない。でも僕らが困った時に、髙田をそこに入れればいいという意味では“一家に一台、髙田椋汰”」

 常に、この連載のタイトルは森山監督がつけてくれているようなもの。「一家に一台、〇〇」という昭和感たっぷりの表現で、髙田選手の存在の大きさを表現してくれた。それでは髙田選手ご本人の話も聞いてみよう。

Photo: Vegalta Sendai

「考えて何かをするというより、迷わずに行く」

――監督も頼りにするタフさ。何か秘訣はあるのでしょうか?

 「いやー。変わったことは何もしていないんですよ。サッカー選手として当たり前のことをしているだけで。ストレッチやケア、食事のバランス、睡眠……。当たり前のことだけですね。でもタフに戦い続けられるということは、自分の持ち味でもあります」

――頭や心を整理する術は何か持っているのでしょうか?

 「ただただ、がむしゃらにやっています。自分のタイプ的に、思ったら自分で行動する。そういうスタイルが自分に合っているのかな。試合中もアグレッシブにボールを取りに行ったり、考えて何かをするというより、迷わずに行く方が、プレースタイルともあっているのかなと思います」

――仙台でのここまでもフル稼働のシーズンですね。

 「移籍してきて、一つ自分の中で目標として掲げていたのは数字として『目に見える結果を出したい』ということでした。ゴールを取ることができたのは良かったですが、アシストはまだまだ少ない(8月2日現在、1アシスト)。そこは足りないなと感じています。攻撃のところで課題が多いので、『仙台の攻撃は右サイド』といわれるようなバリエーションを増やしていかなければいけないです。個人としては“質”。クロスやパスの精度が低いので、高めていかなければいけないなと思っています」

――クロスの本数というところだといかがですか。

 「昨年は(ブラウブリッツ)秋田にいて、サイド攻撃を徹底していました。今年は仙台で、他にも攻撃のバリエーションがある中、来たチャンス、“1本中の1本”を逃さないことが大事です。その精度を高めないと、結果は出てこないなと感じています。本数よりも精度にこだわっていかないといけないです」

Photo: Vegalta Sendai

――第24節徳島戦は、累積警告で出場停止となりましたが、それ以外は全試合出場の活躍です。

 「試合に出ていろいろな経験をさせてもらっています。守備に関してはある程度やれているという感覚はあるのですが、チームとしても、このところは失点が多いです。やっぱり攻撃のところがまだまだです」

求められたところで力を発揮する。素直に「聞く力」

――しかし専門の右SBだけでなく、左SBもできるということはチームにとっても大きいですね。プレー感覚はかなり異なると思うのですが……。

 「左だと左足を使うことが多くなります。世界観というか、見える景色が全く違います。足の運び方や守備の仕方も違う。左では少しやりにくさはありますが、チーム事情もあるので、出させてもらっている以上はどこでも結果を求めてやっていかなければいけないです。守備陣としても、右で左でも関係なく、攻守両面でハードワークして活躍していきたいと日々感じています」

――ちなみに森山監督も現役時代は右SBでした。専門の立場からアドバイスをもらったりしますか?……

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Profile

村林 いづみ

フリーアナウンサー、ライター。2007年よりスカパー!やDAZNでベガルタ仙台を中心に試合中継のピッチリポーターを務める。ベガルタ仙台の節目にはだいたいピッチサイドで涙ぐみ、祝杯と勝利のヒーローインタビューを何よりも楽しみに生きる。かつてスカパー!で好評を博した「ベガッ太さんとの夫婦漫才」をどこかで復活させたいと画策している。

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