新・戦術リストランテ VOL.26
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第26回は、同数プレスの世界的な流行について掘り下げてみる。J1では西部氏が「ずっといいサッカーをしている」と絶賛してきた“ミシャ”(ミハイロ・ペトロヴィッチ)のコンサドーレ札幌、J2ではジェフユナイテッド千葉がチャレンジしている。かつてオールコート・マンツーマンで名を馳せたのはイビチャ・オシムやマルセロ・ビエルサが有名だが、彼らの守備構造は同数プレスとは似ているようで違うという。2つの差にみる、ロマンと人生観とは?
なぜ、同数プレスが流行っているのか?
同数プレスが流行しているようです。
わかりやすいと思うので、攻撃側[3-4-3]に対して守備側[4-4-2]で説明してみます(図1)。
このままのマッチアップだと、攻撃側の左CBがフリーになります。これを放置すると、左CBがパスを受けた時点で局面の数的不利が守備側に生じてしまいます。そこで守備側は縦方向にマークを受け渡すと同時に、DFラインをボール方向へ横スライドさせる「ジャンプ」を行うことがあります(図2)。
この時の守備は、攻撃側のフィールドプレーヤー10人に対して、それぞれマークする同数守備になります。敵陣から圧力をかけていくための守備ですね。
一方、同数守備の弱点もありまして、例えばロングボールを蹴られて、FWに競り落とされるだけでも相手に決定機を作られてしまうリスクがあります。同数になったらトップへ蹴るというのはビルドアップ側の定石でもあります(図3)。
前方から圧力をかけられるメリット、一発で決定機を作られてしまいかねないデメリット。それをどう判断するかで同数プレスをするかどうかが決まってくると思います。そこはチームによってそれぞれなのですが、同数プレスの選択をするチームがわりと多くなっている印象があります。……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。