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「1タッチは意図がなければただの逃げ」シュタルフ悠紀新監督がSC相模原と目指す再現性の先

2024.07.26

相模原の流儀#6

2023シーズンにクラブ創設者の望月重良氏から株式会社ディー・エヌ・エーが運営を引き継ぎ、元日本代表MFで人気解説者の戸田和幸を指揮官に迎えたSC相模原。新たに築き上げた“エナジーフットボール”の礎を2024年6月より引き継ぐシュタルフ悠紀監督の下でJ2復帰を目指す中、“緑の軍団”が貫く流儀に2021年から番記者を務める舞野隼大氏が迫っていく。

第6回では、シュタルフ新監督が相模原の攻撃にもたらしている再現性とその先に迫る。

 かつてY.S.C.C.横浜やAC長野パルセイロで監督を務めたシュタルフ悠紀が、SC相模原の指揮を執って4試合に臨んだ。戦績は2勝2分。勝ち点8を積んで昇格プレーオフ圏内の5位と、J2復帰に向けて順調な滑り出しを見せている。

 シュタルフ監督がトレーニングを見るようになったのは、就任が発表された6月26日。前日に暫定指揮を執っていた高橋健二ヘッドコーチから引き継ぐような形でさっそく指導に当たった。この初日にはすでに選手全員の顔と名前を覚え、練習前に一人ひとりの顔を見ながら名前を呼んで握手している。

 アウェイで行われるJ3第19節カターレ富山戦までに3日しか準備期間がない中で真っ先に取り組んだのは、シーズン序盤に相模原を支えていた堅守を取り戻すこと。クラブがコンセプトとして掲げる“エナジーフットボール”を「走る・戦う・助け合う」と解釈したシュタルフ監督はその3拍子を選手に徹底させた結果、ゴールこそ奪えなかったが公式戦5試合連続で複数重ねていた失点を狙い通りゼロに抑え、0-0で勝ち点1を持ち帰ることができている。

 堅守を取り戻す上では、この富山戦から戦線に復帰を果たした36歳のベテラン、田代真一の存在も大きかった。3CBの中央から声でも味方を統率し、気を利かせながらサポート。両脇の若い加藤大育、山下諒時が前に出て相手を潰しにいくという連動も見られた。ボール非保持でシュタルフ監督は、後ろに選手をベタ引きさせて構えさせるのではなく、これまで強みとしていた前からプレッシングをかけ、チーム全体が連動してハメにいく守り方を引き継いでいる。

J3第19節、富山戦のハイライト動画

「練習で見た光景を試合でも見られれば…」

 ただシュタルフ監督が重きを置いているのは、守備面よりも攻撃面だ。戸田和幸前監督時代から奪った後のボールを大事にできず、簡単に相手へと渡してしまうのが相模原の課題。攻撃回数やアタッキングサードへの侵入回数はリーグでも下位に位置していたが、新指揮官は「富山戦は守備を蘇らせるためにクリーンシートに重きを置いて戦いましたけど、ここからはそれを維持しつつも、チャンスを毎試合1本、2本、3本と増やしていけるように、そのためには距離感や攻撃の配置、選手間の繋がり、アイディアを練習からちょっとずつ落とし込んでいきたい」と意気込んでいた。……

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Profile

舞野 隼大

1995年12月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。大学卒業後に地元の名古屋でフリーライターとして活動。名古屋グランパスや名古屋オーシャンズを中心に取材活動をする。2021年からは神奈川県へ移り住み、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』で湘南ベルマーレやSC相模原を担当している。(株)ウニベルサーレ所属。

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