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涙も母国批判も含めてモラタ。心の病を告白したスペイン代表キャプテンの苦闘と解放

2024.07.26

サッカーを笑え #21

「イニエスタとボージャンの助けがなければこのEUROに出場することはなかった」。EURO2024優勝直後のインタビューで、31歳のFWはこう切り出した。試合中から誰よりも先に涙を流し、大会中から母国批判で物議を醸した、ありのままのスペイン代表キャプテン、アルバロ・モラタの「強さ」と「弱さ」について。

常に複雑だった「デフェンシブCF」とゴールの関係

 モラタの異変にあなたは気づいただろうか?

 彼は泣いていた。ドイツ戦(準々決勝)、フランス戦(準決勝)、イングランド戦(決勝)のタイムアップの笛が吹かれる前に。優勝を確信した涙、というのはわかるが、ドイツ戦、フランス戦のそれは何だったのか? 涙は油断に繋がる。最後の最後までわからない展開で我慢してチームを締めるのが、キャプテンたる者の使命ではないか。歓喜の涙はわかるが、勝利の前に泣いていたのはなぜなのか?

 ドイツ戦の延長後半アディショナルタイム、ヘスス・ナバスの胸に顔をうずめている姿を見て、悔し涙ではないか、と思った。クロアチア戦(グループステージ第1節)で1ゴールを挙げて幸先の良いスタートを切ったが、その後はノーゴール。CFとしての役割は果たしていないように見えていた。……

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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