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「大悟くんのような選手、先輩になりたい」。トリニータ移籍が決まった髙橋大悟がゼルビアに残したもの

2024.07.25

ゼルビア・チャレンジング・ストーリー 第14回

町田の名を全国へ、そして世界へ轟かせんとビジョンを掲げ邁進するFC町田ゼルビア。10年以上にわたりクラブを追い続け波瀾万丈の道のりを見届けてきた郡司聡が、その挑戦の記録を紡ぐ。

第14回で取り上げるのは髙橋大悟。この夏の移籍市場でクラブを離れることが決まった25歳のMFの、ピッチ内はもちろん外でいかにチームに貢献してきたか、エピソードを交えて惜別する。

 最後の望みを託して「一か八かで」蹴り込んだクロスボールからの攻撃は、めぐりめぐって最終的にチャン・ミンギュの決勝点へと帰結した。クラブにとって、“3度目の正直”で成し遂げた清水エスパルス戦の初勝利。23年5月、J2で首位を快走する町田が「自分たちに確信を持てた」(黒田剛監督)この清水戦は、まさにシーズンのターニングポイントとして、J2優勝・J1昇格に繋がった。

 試合終了後、髙橋大悟は人目もはばからず涙に暮れた。それもそのはず、相手はプロキャリアの門を叩いた際のクラブ。戦前、清水との古巣戦を控えた心境について、髙橋は「初めて敵として対戦できるうれしい気持ちと複雑な気持ちが半分ずつ」と話していた。特別なクラブとの試合に感情が追いつかないのも無理はない。のちに髙橋は、涙の理由をこう語っている。

 「何と言えば良いかわからない、言葉にはできない感情ですね。絶対に負けたくなかったですし、絶対に勝ちたかったけど、劇的な勝ち方ができたうれしさもありました。ただエスパは知っている選手ばかりだから、もっと長い時間出たかったなという悔しさもありましたし、プロになる時、強い気持ちを持って清水に加入して、今はこうして敵としてエスパの応援を聴きました。そういった全部の感情が渦巻いてああなりました。また清水を離れた後ろ髪を引かれる思いと、プラスこのチームで頑張るぞというある意味、矛盾した気持ちも重なっての涙でした」

 日頃から髙橋は自身の感情を隠さないキャラクターの持ち主。“エモい”ストーリーがついて回る選手だからこそ、どのクラブに行っても、その先々で愛されてきた。それは町田移籍後も例外ではない。……

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Profile

郡司 聡

編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、エルゴラッソ編集部を経てフリーに。定点観測チームである浦和レッズとFC町田ゼルビアを中心に取材し、『エルゴラッソ』や『サッカーダイジェスト』などに寄稿。町田を中心としたWebマガジン『ゼルビアTimes』の編集長も務める。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド)。マイフェイバリットチームは1995年から96年途中までのベンゲル・グランパス。

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