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「オーストラリアの子どもたちは面白くなければ練習に来ない」鬼ごっこやスキルの真似で楽しく上手くなるエコロジカル式トレーニング

2024.07.22

トレーニングメニューで学ぶエコロジカル・アプローチ実践編#8

23年3月の『エコロジカル・アプローチ』出版から約1年、著者の植田文也氏は同年に盟友である古賀康彦氏の下で再スタートを切った岡山県の街クラブ、FCガレオ玉島でエコロジカル・アプローチの実践を続けている。理論から実践へ――。日本サッカー界にこの考え方をさらに広めていくために、同クラブの制約デザイナーコーチである植田氏と、トレーニングメニューを考案しグラウンド上でそれを実践する古賀氏とのリアルタイムでの試行錯誤を共有したい。

第8回は、オーストラリアのゴールドコースト・ナイツFCでコーチを務める工藤仙氏に自身のクラブで実践しているという、反復ドリルをアレンジしたエコロジカルなトレーニングメニューを紹介してもらおう

教え子の「仕掛け方がわからない」にショック

植田「前回は、あらゆる競技の練習において、厳密な反復トレーニングではなく、バリエーションを加えた反復が望ましいという旨を伝えました」

古賀「動きにノイズが加えられるような制約でトレーニングすることで、動的で不確実な試合環境にも転移させられるスキルを身につけられるという利点ね」

植田「そう。そうした考え方は、ほぼすべての競技のタスク分解系のトレーニングで有効だとお伝えしました。そして、今回はサッカーにおけるタスク分解、ボールマスタリー、コーンドリブル、パス&コントロール、1対1などの典型的な分解ドリルにおいて、どのように“繰り返しのない繰り返し”状態を作っていけるかという話をしたいと思います。

 そこで、今回はオーストラリアのゴールドコースト・ナイツFCでコーチを務めながら、自身が運営するT’s Football Academyでも指導をされている工藤さんにゲストとして登場してもらいましょう。工藤さんよろしくお願いします!」

工藤「はじめまして。工藤です。よろしくお願いいたします。高校卒業後の2007年頃からオーストラリアに移り住み、U-6からU-13ぐらいの選手を対象に、現地の子から日本人の子まで指導をしています。2年ほど前に植田さんが開催していたセミナーに参加した際にエコロジカル・ダイナミクス・アプローチ(EDA)に出会いました。そこからオーストラリアで指導している際に感じる課題についてアプローチするようになりました」

オーストラリアで指導者として活動している工藤さん(右から2番目)

植田「その課題とはどんなものだったんですか?」

工藤「それは分解して反復するようなトレーニングの効果は本当にあるのか?というものです。ただ、それ以前にそうした分解系のトレーニングに集中力高く取り組んでくれるのは日本人の子たちの特徴であることに気づきました。オーストラリアの他の子たちは面白くないと感じれば取り組んでくれませんし、その後練習に来てくれなくなる子もいます。なので、少しでもメニューを魅力的にするにはどうすればいいのかということを考え出しました」

古賀「自分もオーストラリアで指導をしていましたが、そもそもコーチの用意したものに取り組んでくれる、というのは当たり前ではないというのを強く感じました」

工藤「それに加えて、そうした分解ドリルに熱心に取り組んでいたプレーヤーたちの実際の試合での成長が思ったほど見られなかったというのもあります。オーストラリアに来てから出会ったとある教え子とはかなり時間をかけてコーンドリブル、1対1、2人組ボレー、時にはジンガステップのようないろいろなドリルトレーニングを行いました。ところが、彼の最後の試合を見に行った際、彼はサイドの選手として出場していたのですが、1対1を避けてバックパスをしたり、早めにクロスを上げたり……と消極的なプレーが目につきました。試合後に『どうして仕掛けないんだ?』と聞くと、彼から一言『仕掛け方がわからない……』と言われた時に、果たして自分は何を教えてきたのか? と反省するとともに自分の指導を見直すようになりました。

 そのような経験をする過程でEDAが主張する転移という概念や、それに必要なトレーニングのノイズという考え方を知りました。そこからは、これまで行ってきた分解系のトレーニングをどうエコロジカル化するかについて検討してきました。今日は、その一部をご紹介できればと思います」

植田「さっそくなんですが、例えばコーンドリブルで何らかのスラロームコースを作ってドリブルさせるようなトレーニングがよく見られますが、これをエコロジカル化するとどのようなトレーニングになりますか?」……

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Profile

植田 文也/古賀 康彦

【植田文也】1985年生まれ。札幌市出身。サッカーコーチ/ガレオ玉島アドバイザー/パーソナルトレーナー。証券会社勤務時代にインストラクターにツメられ過ぎてコーチングに興味を持つ。ポルトガル留学中にエコロジカル・ダイナミクス・アプローチ、制約主導アプローチ、ディファレンシャル・ラーニングなどのスキル習得理論に出会い、帰国後は日本に広めるための活動を展開中。footballistaにて『トレーニングメニューで学ぶエコロジカル・アプローチ実践編』を連載中。著書に『エコロジカル・アプローチ』(ソル・メディア)がある。スポーツ科学博士(早稲田大学)。【古賀康彦】1986年、兵庫県西宮市生まれ。先天性心疾患のためプレーヤーができず、16歳で指導者の道へ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科でコーチングの研究を行う。都立高校での指導やバルセロナ、シドニーへの指導者留学を経て、FC今治に入団。その後、東京ヴェルディ、ヴィッセル神戸、鹿児島ユナイテッドなど複数のJリーグクラブでアカデミーコーチやIDP担当を務め、現在は倉敷市玉島にあるFCガレオ玉島で「エコロジカル・アプローチ」を主軸に指導している。@koga_yasuhiko(古賀康彦)、@Galeo_Tamashima(FCガレオ玉島)。

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