サウダージの国からボア・ノイチ 〜芸術フットボールと現実の狭間で〜 #6
創造性豊かで美しいブラジルのフットボールに魅せられ、サンパウロへ渡って30年余り。多くの試合を観戦し、選手、監督にインタビューしてきた沢田啓明が、「王国」の今を伝える。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第6回(通算184回)は、準々決勝で敗退したカタールW杯から1年半、迎えたコパ・アメリカ2024ではグループステージを1勝2分の2位で終え、決勝トーナメント初戦で姿を消すことになったセレソンの悲惨な現状について。
コスタリカ、コロンビアに苦戦し、10人のウルグアイに敗北
「セレソン史上、最悪、最弱のチームだった」(国民的スポーツアナウンサーのガルボン・ブエノ)
「まったくいいところがないまま、早々と大会から消え去った。セレソンにとって幸運だったのは、この大会にラウンド16がなかったこと。もしあったら、そこで敗退していた」(リオの日刊紙『オ・グローボ』)
「このチームでただ一人、株を上げたのは(故障のため欠場した)ネイマール。もし優勝していたら『もうネイマールは不要』と誰もが思っただろう。しかし、このような惨めな負け方をしたことで、『やっぱりネイマールは必要』と思った人が増えたのではないか」(評論家アルナウド・リベイロ)
コパ・アメリカ準々決勝でウルグアイと0-0で引き分けた末、PK戦で敗れた後のブラジル国内の反応だ。怒り、失望、そして嘲笑……。……
Profile
沢田 啓明
1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。