イタリアとブラジルの早期敗退に想う、カテナッチョとタベーラという伝統の喪失
新・戦術リストランテ VOL.23
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第23回は、EUROでベスト16敗退のイタリア、コパ・アメリカでベスト8敗退のブラジルという2大サッカー大国の不振について考察してみたい。
2大サッカー大国に何が起きているのか?
EURO2024、コパ・アメリカ2024ともにベスト4が決定しております。
EUROはスペイン、フランス、イングランド、オランダ。コパはアルゼンチン、ウルグアイ、コロンビア、カナダです。だいたい強豪国が順当に勝ち上がっています。
ドイツ、ポルトガルはベスト8で敗退していますが、相手がスペイン、フランスですから強豪同士の潰し合いです。中堅国でベスト8入りしたスイス、トルコは健闘しましたが力及ばず。
コパ・アメリカの方はカナダが目を引きますが、準々決勝の相手はベネズエラでしたからね。アルゼンチン、ウルグアイ、コロンビアは順当。ブラジルが敗退していますが相手はウルグアイです。
こうして見ると中堅国はベスト8までは行けても、ベスト4はそれなりにハードルは高かったというのが現状でしょうか。カナダを別にすると、イングランドとPK戦だったスイスが最も惜しかったという結果ですね。
さて、強豪国が比較的安泰という現状でも例外はあります。欧州はイタリア、南米のブラジルが敗退しています。W杯優勝回数の1、2位です(ブラジルは優勝5回、イタリアはドイツと並ぶ4回)。イタリアはラウンド16でスイスに0-2の完敗。ブラジルは準々決勝でウルグアイにPK戦での敗退ですが、大会4試合で1勝3分という不振。サッカー大国に何が起きているのでしょうか。
キエッリーニとボヌッチがいた前回大会との違い
イタリアの凋落が目立ちます。
グループステージは1勝2分の2位通過。アルバニアを2-1で下し、スペインに0-1、クロアチア戦をロスタイムのゴールで辛くも引き分け(1-1)。そしてラウンド16はスイスに完敗。4試合で1勝だけなのはブラジルと同じですが、イタリアはスペイン、クロアチアと同居する厳しいグループでしたから同情すべきところはあると思います。ただ、前回優勝国ということを考えると、かなり寂しい内容でしたね。
イタリアを見ていて感じたのはアイデンティティの喪失です。……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。