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心の傷を克服した強勇ダルウィン・ヌニェス。「10回失敗しても11回挑戦する」スアレスの後継者

2024.07.06

EL GRITO SAGRADO ~聖なる叫び~ #6

マラドーナに憧れ、ブエノスアイレスに住んで35年。現地でしか知り得ない情報を発信し続けてきたChizuru de Garciaが、ここでは極私的な視点で今伝えたい話題を深掘り。アルゼンチン、ウルグアイをはじめ南米サッカーの原始的な魅力、情熱の根源に迫る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第6回(通算165回)は、現在アメリカで開催中のコパ・アメリカ2024で準々決勝に進出した(現地76日にブラジル代表と対戦)ウルグアイ代表の、これからを背負う25歳のストライカーについて。

ルーチョ・コールに「うるさい、黙れ」

 コパ・アメリカのグループステージ第1節ウルグアイ対パナマ戦(3-1)で、85分にボレーシュートからウルグアイの2点目となるゴールを決めた直後、ダルウィン・ヌニェスは挑発的な表情でスタンドを見上げ、片耳に手を当ててから人差し指で口を塞ぐパフォーマンスを見せた。待ちに待った追加点に沸くサポーターたちに「うるさい、黙れ」と無言で訴えたのだ。

 この試合でのダルウィンは決定的なシュートチャンスを何度も逃し、業を煮やしたサポーターたちからは後半の途中からルイス・スアレスの出場を求めるルーチョ・コールが巻き起こっていた。それでも自分を信じて最後までチャンスを与えたマルセロ・ビエルサ監督の信頼に応え、“うるさい”サポーターたちの口を塞いだのである。

 このパフォーマンスについてはウルグアイ国内でも問題視する声が上がり、ディベートのテーマとなった。やっと決まったゴールに人々が喜びを爆発させる中、祝福ムードに水を差すようなジェスチャーを見せられれば誰でも興醒めするだろうし、咎める人の気持ちはわからなくもない。……

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Profile

Chizuru de Garcia

1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。

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