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国内では「辞めろ」の大合唱。スパレッティのアズーリは、なぜ失敗したのか?

2024.07.05

CALCIOおもてうら#21

イタリア在住30年、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えるジャーナリスト・片野道郎が、ホットなニュースを題材に複雑怪奇なカルチョの背景を読み解く。

今回は、前回王者イタリア代表がラウンド16でスイスに完敗してEURO敗退が決まった理由を掘り下げてみたい。スパレッティ監督が自身が掲げた「6つの掟」を貫けず、迷走してしまったのはなぜなのか? 「続投」を明言したFIGCグラビーナ会長の決断の背景、そしてアズーリの未来について考える。

敗因を探るための3つの議論

 スイスにあまりにも不甲斐ない敗北を喫し、ベスト8にすら勝ち上がれずにEURO2024の舞台を去ったイタリア。それから数日の間、イタリア国内ではこの惨事の「戦犯」であるルチャーノ・スパレッティ監督、そしてイタリアサッカー連盟(FIGC)のガブリエーレ・グラビーナ会長に対する非難の声が止まない状況が続いている。

EURO2024ベスト16、スイス戦のハイライト

 その大半は、アズーリの恥ずべき戦いぶりに対する苛立ち、敗北への怒りに任せた「責任を取って辞めろ」という感情論。敗退翌日に開かれた記者会見でグラビーナが、そうした声に先手を打つようにスパレッティの続投を明言し、自らも来年3月までの任期を全うすると宣言したこと、自ら(とスパレッティ)の責任を認めながらも、選手やクラブに責任を転嫁するような発言があったことで、火に油を注いだ観がある。

 それもあって現時点ではまだ、スパレッティとグラビーナに向けて理性を欠いたクソリプの嵐が吹き荒れている状況であり、敗退に至った経緯やその原因を冷静かつ客観的に掘り下げ、その改善に向けた具体的な提案・提言につなげていこうという建設的な議論は、まだ始まってすらいない。しかしもちろん、最も必要とされているのはそちらの方だ。

 今回の敗退に関しては、議論をいくつかのレベルに分ける必要がある。

 まず、選手選考から戦術の選択、采配、チームマネジメントなど、この大会にまつわるスパレッティ監督の仕事に対する評価。次に、今後のイタリア代表のあり方について、監督選び、戦術プロジェクトなど総合的な観点から検証する議論。そして、タレントの輩出や育成にかかわるシステムや制度のあり方など、より長期的な観点からイタリアサッカー全体の復興に取り組むための議論だ。

「6つの掟」を信じられなかったのは、なぜか?

 最初の論点について言えば、スパレッティ監督の仕事が期待を大きく裏切るものだったことは否定のしようがない。メンバー選考に始まり、グループステージの3試合を経て、ラウンド16のスイス戦で敗退するまでの足取りは、「迷走」というしかない、一貫性に欠ける混乱したものだった。

 26人のメンバー選択にあたって、オルソリーニ(ボローニャ)、ポリターノ(ナポリ)という左利きの逆足ウイング2人を外し、その代わりにDFを計10人も招集したのは、3月の米国遠征、そして直前の親善試合(対ボスニア)で試した3バックの布陣([3-4-2-1])が前提であるように思われた。

 しかし、アルバニアとの開幕戦の布陣は4バック、しかも左サイドで持ち味をより発揮するキエーザを右に配した[4-3-3]。とはいえ、スパレッティ監督が就任以来一貫して掲げてきた「ポゼッションとプレッシングによってボールと主導権を握って戦う」というコンセプトは、相手が受けに回ったこの試合ではまずまず実現されているように見えた。

敗れたスイス戦で、ピッチサイドから戦況を見つめるスパレッティ。イタリア代表監督として臨んだ初のメジャータイトル挑戦はベスト16で終わることに

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Profile

片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。

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