REGULAR

日本人スタッフ&町野修斗が見たドイツ新名将の素顔。最北のクラブ・キール、史上初昇格への内幕

2024.07.04

遣欧のフライベリューフリッヒ#4

「欧州へ行ってきます」。Jリーグの番記者としてキャリアをスタートさせ、日本代表を追いかけて世界を転戦してきた林遼平記者(※林陵平さんとは別人)はカタールW杯を経て一念発起。「百聞は一見にしかず」とドイツへの移住を志した。この連載ではそんな林記者の現地からの情報満載でお届けする。

多くの日本人サッカーファンにとって耳慣れぬ名前が今季ドイツの2部リーグを席巻していた。ホルシュタイン・キール。戦術的こだわり派であり、ファミリー感も大切にする指揮官の作り上げたチームはどんなものだったのか。その内幕を知る2人の日本人、FW町野修斗と、アナリストの佐藤孝大氏に、現地ドイツで取材を重ねる林遼平記者が迫った。

ブンデスに新風の予感

 ドイツに新たな風が吹き始めている。

 ブンデスリーガでシャビ・アロンソ監督が率いるレバークーゼンがバイエルンの12連覇を阻んで史上初の無敗優勝を遂げれば、近年残留争いに巻き込まれていたシュトゥットガルトがセバスティアン・へーネス監督のもとで2位となり08-09シーズン以来のCL出場権を獲得。バイエルン、ドルトムント、ライプツィヒの3チームが上位を締める流れが続いていた中で、確かな変化が生まれるシーズンとなった。

 この上位に入った両チームに共通して言えることは、ポゼッションスタイルを志向していたこと。後方からビルドアップを行い、ボールを保持しながら攻撃していくスタイルが、ブンデスリーガで猛威を振るったのだ。 

 そんな中、昨季のブンデスリーガ2部で面白いチームが2つあった。どちらも同様にポゼッションスタイルを志向し、後方からボールを動かして相手陣に攻め入っていく形を前面に押し出しており、プレッシングスタイルや大雑把にロングボールを入れるチームが多いドイツ2部リーグでは珍しいチームだった。

 その1つがブライトンに引き抜かれることになったファビアン・ヒュルツェラー監督が率いたザンクトパウリ。そしてもう1つ、日本代表FW町野修斗を擁するホルシュタイン・キールである。

昇格を祝うパーティーで、集まったファンに挨拶するファビアン・ヒュルツェラー元監督。過去には宮市亮(2015-21)が所属したザンクトパウリは来季13シーズンぶりにブンデスリーガを戦うことになる

予想を覆し、初の昇格

 昨季の開幕前、キールに対するドイツメディアの評価は決して高くなかった。一昨季まで主力を務めていた選手たちが抜けたこともあり、降格候補に加えていたジャーナリストもいたくらいだ。

 だが、そんな戦前の予想をキールは見事に跳ね除けて見せる。……

残り:2,692文字/全文:3,776文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

林 遼平

1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

RANKING