じわじわと強い?メッシのアルゼンチン代表が持つ不思議な4つの特徴
新・戦術リストランテ VOL.22
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第22回は、コパ・アメリカでもグループステージ3戦全勝だけど、圧倒的でも鮮やかでもない。W杯王者のアルゼンチン代表が持つ、不思議な4つの特徴を掘り下げてみたい。
アルゼンチンの「じわる3連勝」
コパ・アメリカ2024のグループステージを3戦全勝で通過したアルゼンチン代表は、まさにアルゼンチンらしいチームになっております。
カタールW杯優勝メンバーがほぼ残っていますから大きな変化はありません。なので、今更と思われるかもしれませんが、よく考えると他国にはないアルゼンチンらしさが満載なんです。
そもそもW杯優勝といっても、そんなに強かった印象はないですよね。初戦はサウジアラビアに負けていますし、準々決勝のオランダ戦と決勝のフランス戦はPK戦での勝利でした。強いことは強いんですけど、圧倒的でも鮮やかでもない。けど、何かよくわからないけど、じわじわと強い。これが特徴だと思います。
そして今回のコパ・アメリカもまさにそれ。勝ち方も相変わらずスカッとしません(笑)。じわる3連勝なんです。
よく知っているようで、案外知らないかもしれない。そんなアルゼンチン代表の魅力と不思議さについて考えてみたいと思います。
特徴その1:スーパースター推し
アルゼンチンと言えばメッシ。カタールW杯優勝はメッシ・システムの成功と言っても過言ではないでしょう。コパ・アメリカでもそれは継承されていますが、今どきこれほどスター中心主義のチームもないです。
メッシ・システムと言っても、難しいものではありません。それどころか、至ってシンプルな[4-4-2]です。またこれが、長年試行錯誤してきた最適解になっていることも、じんわりするものがあります。
例えば、バルセロナでのメッシ・システムとして、ご存知「偽9番」がありました。また、その後のスアレス、ネイマールの加入で「偽7番」もあった。[3-4-3]のトップ下もやっています。一方、アルゼンチン代表でもその時々で、だいたいバルサに合わせて、いろいろやってきたのですが、いま一つはまりませんでした。
バルサにはブスケッツがいて、イニエスタやダニ・アウベスがいて、何よりシャビがいた。周囲がメッシの活かし方を心得ていました。いつ、どのように、メッシにボールを届ければいいかよくわかっていた。代表チームだと、そうしたあうんの呼吸はなかなか熟成されませんからね。形だけ真似ても機能しなかったのは無理もありません。
ところが、エスカローニ監督が就任すると、いきなりメッシ・システムが機能し始めます。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。