苦境のトリニータを救え!育成枠の若手を鍛える「安井塾」への期待
トリニータ流離譚 第14回
片野坂知宏監督の下でJ3からJ2、そしてJ1へと昇格し、そこで課題を突きつけられ、下平隆宏監督とともにJ2で奮闘、そして再び片野坂監督が帰還する――漂泊しながら試練を克服して成長していく大分トリニータのリアルな姿を、ひぐらしひなつが綴る。第14回は安井聡志コーチが育成枠の若手を鍛える「安井塾」にフォーカス。生え抜きを中心とした若手たちは、苦境のトリニータを救う救世主となれるのか?
どうしたことか、チームの約半数近くが負傷離脱している現状。2月26日に左大腿二頭筋肉離れと公式発表された鮎川峻が、ようやくここ数試合は短い時間ずつ出場を重ねているが、プレシーズンに今季の主力として期待を集めたサムエルや池田廉はいまだ合流しておらず、昨年6月に左膝前十字靭帯を損傷した茂平も、一度は復帰したもののまたメンバー外が続いている。試合中や練習中の事故による負傷も多いが、昨今の戦術トレンドに対応すべく、トレーニング強度を高めていることも要因の1つのようだ。
稼働できる戦力が限られる中、コンディションの良好な選手をかき集め、そのメンツを踏まえて練った対相手戦術を落とし込んで試合に臨むということが繰り返されており、ゲームプランニングも非常に悩ましい様子。選手の復帰や離脱が繰り返される中でメンバーが入れ替わり立ち替わりということになり、試合中のアクシデントで急造に次ぐ急造の布陣を強いられることもあって、今季からトライしている新たなスタイルの浸透も、思うようには進んでいない。
勝ち点を積むペースも上がらず、J2第22節終了時点での順位は15位。J3降格圏の18位と勝ち点3差という厳しい立場にあるが、リーグ全体を見渡せば中位から下位にかけての10チームほどは大混戦で、1、2試合の結果で順位が大きく入れ替わる状況だ。混沌としながら早くも残留ラインが気になり始める中、少しでも早く1つでも上の順位へと抜け出したいところだ。
「安井塾」の参加者は5人
そんな逆境にあって、本来ならばまだ出場機会を得られないであろう若手たちも、試合に絡むようになっている。昨季はリーグ戦と天皇杯の各1試合出場にとどまった2年目の生え抜き・佐藤丈晟は、負傷者が多発した左SBへとコンバートされ、自慢の左足を、本職である前のポジションとは異なる形で生かしつつある。今季アカデミーからトップ昇格した松岡颯人、木許太賀、小野俊輔の3人も、当初はポジション争いまでにまだまだ時間を要すると思われていたが、天皇杯のみならずリーグ戦でも、メンバー入りを果たしている。……
Profile
ひぐらしひなつ
大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg