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チーム最多15得点!オナイウ阿道、再びリーグ1へ「みんなのパスがあって今日がある」【現地取材】

2024.06.16

おいしいフランスフット #5

1992年に渡欧し、パリを拠点にして25年余り。現地で取材を続けてきた小川由紀子が、多民族・多文化が融合するフランスらしい、その味わい豊かなサッカーの風景を綴る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第5回(通算163回)は、横浜F・マリノスからトゥールーズ、そしてオセールへと渡り、リーグ2(2部)優勝&リーグ1昇格に貢献した28歳の仏挑戦3年目を、最終節後の談話とともに振り返ろう。

優勝!そして最終節で今季2度目のハットトリック!

 リーグ優勝、さらにハットトリックでシーズンを締めくくる。

 そんなパーフェクトなエンディングを、オセールのオナイウ阿道は、リーグ2の最終節で体験した。

 オセールの優勝は前節が終了した時点で決定していたから、このコンカルノー戦は消化試合だったのだけれど、前節はアウェイだったため、本拠地スタッド・アベ・デシャンのサポーターたちの前でチャンピオンたちの勇姿を披露する、これは特別な一戦だった。

5月17日のホームスタジアムはウォームアップ時からこの盛り上がり!

 そしてセンターフォワードで先発出場したオナイウは、そこでパーフェクトと言っても過言ではない素晴らしいパフォーマンスを披露した。

 試合は相手に先制点を許したが、前半終了間際の40分に、オナイウが右からのクロスをヘディングで叩き込んで1-1の同点に戻す。後半64分には、ゴール前に切り込んだMFラヤン・ラベロゾンの横パスにドンピシャのタイミングで走り込んで2点目をマーク。そして81分、右からの高めのクロスを巧みなトラップから強烈ボレーでネットに突き刺し、ハットトリックを完成させた。

 最後は、2023-24シーズンのリーグ2年間最優秀選手に選ばれたMFゴティエ・アインがトドメの4点目を記録したが、このシーンでもオナイウはゴール前で体を張って相手DFを食い止めるなど、試合を通して、くさびとなってパスをさばいたり、自陣深くまで激走してボール奪取したりと攻守に大奮闘。86分に交代がコールされた時は、スタンディングオベーションで見送られた。

 ホームで4-1というチャンピオンらしい快勝で最終節を締めくくったチームは、ピッチになだれ込んだサポーターにもみくちゃにされながら、晴れ晴れと優勝カップを掲げたのだった。

試合後ピッチになだれ込むサポーター(上)と歓喜のトロフィーリフト(下)

 「最終戦の今日、ホームでサポーターのみんなの前で勝って、こういうセレモニーをしたいなと思っていたので、それを実現できたのがまず良かった」と試合後に喜びを語ったオナイウ。

 「今シーズン、センターフォワードとしてプレーした中では良かった方だと思いますし、攻撃の部分も守備の部分も、得点以外のところでもある程度は貢献できたかなと思います」と最終節でのパフォーマンスを振り返った。

 自身初となるシーズン2度のハットトリックを含む、チーム最多の15得点という立派な結果でオセール1年を終えたが、「15」というのは入団当初から頭に置いていた数字だったそうだ。

 「ここに来て最初に監督やGM(ゼネラルマネージャー)たちと会った時に、15ゴールというのは話していたので。そんなに15、15と考えていたわけではないですけど、一つずつ取って、だんだんと近づいていく中で、うまくいかない試合や点を取れるシーンで取れなかった試合もありました。最後、そこまで行けたのは僕だけの力じゃないし、みんなのパスだったり、運動があって今日がある」

「自分を必要としてくれている」オセールで、経験豊富なリーダーとして

……

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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