新・戦術リストランテ VOL.19
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第19回は、UEFAネーションズリーグではジャイアントキリングを連発、EURO2024予選を無敗で突破し本大会でもダークホース候補として注目されているハンガリー代表を分析してみたい。
欧州中堅国の中でもトップクラスの実績
編集部からハンガリー代表が面白いと聞いて、最近の親善試合をさっそくチェックしてみました。EUROの予選ではセルビア、モンテネグロ、リトアニア、ブルガリアと同居したグループを首位通過、5勝3分で無敗。
監督は前回のEURO本大会でも指揮を執ったイタリア人のマルコ・ロッシ。母国では無名の指導者でしたが、ハンガリーで名門ホンベドをリーグ優勝に導いて名を上げ、2018年にハンガリー代表監督に就任。その後のハンガリー代表は中堅の中でもトップクラスの戦績で注目されています。
EURO2020ではドイツ、フランス、ポルトガルと同組という厳しい組分けながら、ドイツとフランスにドロー。初戦のポルトガル戦を0-3で落としたのが響いてグループステージ突破はなりませんでしたが、久々に国際舞台でハンガリーが注目されることとなりました。
22-23ネーションズリーグでもイングランドに2度勝ち、ドイツにも勝利してグループ2位。イタリアに首位を譲ることになりましたが、アウェイでイングランドに4-0で勝利したのは驚きでした。
今回のEUROはドイツ、スイス、スコットランドと同組です。これまでと比べると普通の組分けですね。中堅の星、ジャイアントキラーとして、今回も活躍が期待されています。
「革新」チームの末裔は「わりと普通」?
というわけで、親善試合のイスラエル戦を中心に見てみたのですが、先に感想を言ってしまうと「わりと普通」でした。ただ、グループステージを突破しても不思議ではない力はありそうです。
古豪ハンガリーが復活してきたというと、どうしても過剰な期待を持ってしまうのかもしれません。なにせ、1950年代は史上最強とも言われるスーパーチームでしたからね。……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。