EURO2024に臨むオランダ代表は一味違う!フリンポン台頭で完成した新[4-3-3]を解読する
VIER-DRIE-DRIE~現場で感じるオランダサッカー~#5
エールディビジの3強から中小クラブに下部リーグ、育成年代、さらには“オランイェ”まで。どんな試合でも楽しむ現地ファンの姿に感銘を受け、25年以上にわたって精力的に取材を続ける現場から中田徹氏がオランダサッカーの旬をお届けする。
第5回ではEURO2024に出場するオランダ代表に注目。6月6日に現地取材したカナダ戦を題材に、新[4-3-3]のメカニズムを紐解く。
3トップが組めないのが理由?5バック併用の是非
オランダサッカーと言えば[4-3-3]である。今もオランダリーグの大多数のクラブがこのナショナルフォーメーションを基軸に戦っている。しかしオランダ代表は14年W杯を皮切りに21年EURO、22年W杯で5バックシステム(もしくは4バックシステムとの併用)を採用している。かつてオランダ人の間では「オランイェは4バックにすべきか? それとも5バックか?」という論争が激しく交わされたものだが、どうやら今はどちらのシステムも受け入れられているようだ。
EURO2024を戦うオランダ代表はフィルジル・ファン・ダイク、マタイス・デ・リフト、ナタン・アケ、デイリー・ブリント、ステファン・デ・フライ、ルシャレル・ヘールトラウダ、ミッキー・ファン・デ・フェンとCBの人材が豊富で、しかも複数ポジションをこなす万能型が大多数。4バックだろうと5バックだろうと、高いレベルでタスクを実行できるプロフェッショナルばかりだ。
また、チームがビハインドを負った際にはMFフレンキー・デ・ヨング、イェルディ・スハウテン、テウン・コープマイナースから1人を選んで最終ラインにコンバートし、前線に上げたファン・ダイクに向かってロングボールを蹴るというパワープレーも可能。守備陣の質・量を考えれば、オランダの4バックシステム&5バックシステムの併用はポジティブである。
一方で攻撃陣の質・量を鑑みると、「オランダの5バックシステムは、3トップを維持できないがゆえのネガティブなもの」と見ることもできる。「現在もオランダリーグの大多数が[4-3-3]」と冒頭で記したが、上位勢のウインガー陣を振り返ると下記のような現状があった。
・若手オランダ人を我慢強く起用して両翼を育てるAZ
・アヤックスはステフェン・ベルフワイン(EUROメンバー入り)、ステフェン・ベルフハウスというオランダ代表級のウイングをそろえるも不振や負傷で結果を残せず、シーズン終盤は[4-3-3]と[3-5-2]の併用に
・両翼を国外からの助っ人に託したフェイエノールト(ヤンクバ・ミンテー、イゴール・パイション)とスパルタ(斉藤光毅、三戸舜介)
・PSVは各国から質量ともに豊富なサイドアタッカーがいる。その中のオランダ代表級はノア・ランだったが、負傷によりEUROの選考から漏れた……
Profile
中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。