ゼルビア・チャレンジング・ストーリー 第12回
町田の名を全国へ、そして世界へ轟かせんとビジョンを掲げ邁進するFC町田ゼルビア。10年以上にわたりクラブを追い続け波瀾万丈の道のりを見届けてきた郡司聡が、その挑戦の記録を紡ぐ。
第12回は、5月に入り無敗で再び首位に返り咲いたチームのここまでの戦いぶりから見えてきた得手不得手と、指導陣が懸念する“対策”についてゼルビア視点から考察する。
町田のスタメン2トップを交代に追い込み、機を見てボールを前に持ち出せば、相手のラインが下がっていく。堅守自慢の町田を相手に、ボールを保持しながら「相手が間延びするのを待っていた」(アレクサンダー・ショルツ)浦和レッズは、前進のルートを探り当てていた。
1-1のスコアから相手を突き放すのも時間の問題。浦和のショルツは「65分から90分までの試合を見てもらえれば、どちらが勝つかと言えば浦和だったでしょう」と振り返る。
ところが、浦和は最後の扉をこじ開けるのに手こずった。ホームチームは途中出場組の武田英寿と酒井宏樹を軸に右サイドから猛攻を仕掛けたが、勝ち越しの1点が遠い。そうこうしているうちに、時計の針が90+4分を超えると、浦和に落とし穴が待っていた。
サミュエル・グスタフソンからのボールを引っかけたミッチェル・デュークが宇野禅斗に繋ぎ、宇野が平河悠へ縦につけると、平河からの縦パスに反応したナ・サンホがボックス内に進入。カバーに回ったショルツよりも先にボールに触れたナ・サンホがショルツに倒されると、主審の右手がペナルティスポットを指していた。
「あの場面は行くべきではなかったのかもしれない」とショルツが自省しても“後の祭り”。「1つのアクションですべてが決まってしまうような試合」とショルツが感じていたように、一瞬の隙が勝負を分けた。
ボール保持型チームは“大好物”
……
Profile
郡司 聡
編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、エルゴラッソ編集部を経てフリーに。定点観測チームである浦和レッズとFC町田ゼルビアを中心に取材し、『エルゴラッソ』や『サッカーダイジェスト』などに寄稿。町田を中心としたWebマガジン『ゼルビアTimes』の編集長も務める。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド)。マイフェイバリットチームは1995年から96年途中までのベンゲル・グランパス。