アジアを制したU-23日本代表にみる「均質型」の強みと、五輪で「眼が揃わなくなる」リスク
新・戦術リストランテ VOL.14
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第13回は、U23アジアカップで優勝し、見事パリ五輪の出場権を手にしたU-23日本代表に感じた均質性の強みと、パリ五輪でチームを再構成することで生じる「眼が揃わなくなる」リスクについて考えてみたい。
「チームとして素晴らしい」の真意
その昔、私がフランスにいた頃の話。
日本のアンダー世代のチームが遠征に来ていました。偶然、そのチームの試合を見た知人(フランス人)は日本チームのプレーぶりに「感銘を受けた」と話していました。「規律正しく、よく動くし技術も高い」と絶賛。
そこで「どの選手が良かったの?」と聞くと、「個人的にはよくわらないけど全体が良かった」とのこと。東洋人の顔を見慣れていないので、区別がつきにくいのは理解できます。それでも背番号くらいは覚えているだろうと思ったのですが、それも全く。利き足や特徴を聞いてもわからず。その人、普段からすごくサッカーを観ているのですが、個々についての情報を記憶していなかった。
特殊なケースではありません。
日本のチームを褒めてくれる人はいつもいるのですが、個々について聞くとだいたい記憶にない。日本の選手たちは均質的で、ボールの止め方、持ち方、蹴り方がすごく似ているからです。もちろんよく見れば違っているのですが、欧州人にはわかりにくかったのでしょう。
たとえ話として適切かどうかわかりませんが、パリのボウリング場へ行った時に驚かされたことがありました。投げ方が凄かったので(笑)。ボールの穴に指を入れないでつかんで投げる人がいました。フォームが恐ろしいほど独特な人、両手で転がす、ラインを3メートルぐらい越えちゃう人も。いかに日本人がきれいなフォームで投げているかがよくわかりました。ただ、凄まじい投げ方なんですが、けっこうちゃんとピンを倒していたのは二重の驚きでした。
癖が強い。プロサッカーは素人のボウリングとは違いますが、それでもそれなりに癖が強く個性的と言えばそうなんですね。
U23アジアカップで優勝、パリ五輪の出場権を獲得したU-23日本代表は均質的でした。誰がどうというより、チームとしてまとまっていて強かった。そして、日本人以外の人にこのチームの選手について聞くとしたら、やっぱり「チームとして優れていた」みたいな答え方をされるかもしれません。
ターンオーバーがしやすい理由
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。