REGULAR

己に厳しく完璧を追求しつつ、周りを笑わせるサービス精神は忘れず。アルビレックス新潟にはいつだって千葉ちゃんがいる!

2024.04.26

大白鳥のロンド 第10回

中2日で戦ったYBCルヴァンカップ2回戦のいわきFC戦と、J1第9節の京都サンガF.C.戦。アルビレックス新潟が飾った連勝に、2試合続けてのスタメン出場で貢献したのが千葉和彦だ。今季のここまでは決して多くの出場機会を得られているわけではないが、やはりその存在感は絶大。38歳になるエンターテイナー、“千葉ちゃん”がチームに与える計り知れない影響を、おなじみの野本桂子が改めて考察する。

「自分は欲深い人間」と語る尽きない向上心

 アルビレックス新潟は、リーグで5戦勝ちなしだった流れをアウェイで断ち切った。

 4月17日、YBCルヴァンカップ2回戦・いわきFC戦(◯2-0)で約1カ月ぶりに公式戦での勝利を味わうと、3日後の20日、明治安田J1リーグ第9節・京都サンガF.C.戦(◯1-0)でも勝利を収めた。

 この2連勝で存在感を示した1人が、千葉和彦だ。

 中2日で挑んだアウェイでの2連戦。先発メンバーを大きく入れ替えて臨んだ中で、唯一、2試合連続で先発フル出場。DF陣にケガが重なり、ターンオーバーが難しかったという事情もあるが、チーム最年長、38歳のDFは、クリーンシートでの連勝に貢献した。

 松橋力蔵監督は「最年長でもあり、多少なりともコンディションを整えるのが難しい部分はあったと思いますが、しっかりと結果を残してくれて、全員を鼓舞してくれている部分に繋がっていると思います」とベテランの仕事を称えた。

 いわきからのナイトゲームを終えて、チームがバスで新潟に戻ったのは翌日1時過ぎ。その日はオフになった。千葉は自主的にクラブハウスでリカバリートレーニングと治療を行い、京都戦に備えたという。

 2試合とも相手のハイプレスにより、ビルドアップの精度を削られて押し込まれる時間もあったが、粘り強く耐えて崩れなかった。

 「両方ともアウェイでしたし、チーム全体で、多少なりとも押し込まれる展開を想定しながらやっていました。割り切って守らなければいけない時間帯もあるだろうなと。失点0で抑えられて良かったですし。本当にみんなが集中して戦えた結果だと思います」と千葉はチームとしての手応えを口にした。

 ただ千葉個人にとっては、今季初出場となった明治安田J1リーグ第5節・柏レイソル戦(△1-1)以来、久々に得た出場機会。そこで立て続けに結果を出してアピールできたことは、大きな意味を持つ2連戦だったはずだ。

 あらためてそのことについて尋ねると「もちろん、試合が終わった直後はやっぱりうれしいですよ。でも、自分は欲深い人間なんでね。内容に目を向ければ、全然まだまだと思いますし、もっとよくならないと。できなきゃ上位にはいけないと思いますし。今後は内容も含めて向上させていきたいなという思いは強いです」と表情を引き締めた。

 千葉和彦、38歳。その男の向上心は尽きない。

ムードメーカーであり、エンターテイナーでもある鬼才

 千葉は2005年途中に新潟へ加入し、2012年からサンフレッチェ広島でプレー。森保一監督と3度の優勝を経験した。2019年に名古屋グランパスへ移籍したものの、出場機会は得られず。2021年、10年ぶりに新潟へと復帰した。千葉のビルドアップ能力は、ボールを保持して主導権を握るスタイルになった新潟の進化をさらに後押しし、翌年ついにJ1昇格にも貢献した。プロキャリアの半分以上となる11シーズンを、新潟で過ごしている。

 サポーターからは“千葉ちゃん”と親しみをこめて呼ばれる、ムードメーカー的な存在だ。

サポーター感謝イベント「アルビレックス新潟サマーフェスタ2023」の選手運動会で宣誓を行う千葉(Photo: Keiko Nomoto)

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Profile

野本 桂子

新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。24年4月からクラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。

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