堺屋佳介と北島郁哉。サガン鳥栖の2人のルーキーが築く「最高の仲間であり、最高のライバル」という関係性
プロビンチャの息吹~サガンリポート~ 第2回
図らずもレギュラーの椅子を争うライバルになった。U-18から昇格してきたばかりの2人のルーキー、堺屋佳介と北島郁哉は左サイドバックの定位置を巡り、トレーニングからアピールを続けている。もともと本職の北島に対し、攻撃的なポジションを務めることが多かった堺屋も持ち味を発揮し、既にJ1でスタメン出場も経験。首脳陣の評価も上々だという。そんな彼らの現状とお互いへ抱いている想いに、杉山文宣が迫る。
堺屋佳介がプレシーズンで作り上げていったサイドバック像
2022年にはU-18が高円宮杯JFAU-18サッカープレミアリーグで日本一の栄冠に輝くなど、近年躍進著しい鳥栖の下部組織。現在、5年連続でU-18からトップチームへ昇格する選手を輩出しており、海外に目を向けても田川亨介(ハーツ/スコットランド)や二田理央(ザンクトペルテン/スイス)、福井太智(ポルティモネンセ/ポルトガル)といった選手達が異国の地で挑戦を続けている。
そんな“育成の鳥栖”で今季、トップチーム昇格を果たしたのが堺屋佳介と北島郁哉の2人だ。ともに鳥栖U-15出身でもあり、高円宮杯 JFA 第32回全日本U-15サッカー選手権大会で日本一をつかんだ鳥栖の黄金世代の主役を担った存在でもある。「トップチームで活躍する」。下部組織出身者であれば誰もが抱くであろう大志を胸に宿して今年1月、2人はプロとしてのスタートを切った。
鳥栖U-18では高いサッカーセンスに基づく遂行力からさまざまなポジションをこなしていた堺屋だったが、トップチームで配置されたのはサイドバックだった。元々は前めのポジションを得意とする堺屋だが、鳥栖U-18でもSBでのプレー経験はある。ただ、それほどSBとしての堺屋の印象が強くない。そんな中で川井健太監督は堺屋をSBに配置した意図をこう明かした。
「彼の良さはゴール前に入っていけること。そういう感覚を持っているので、僕としては怖い存在になってほしいなと思っています。テクニカルな選手はわれわれのチームに多いですが、ゴールに直結して後ろから出ていける選手はあまりいないので、そういう存在になってほしい」
開幕前の沖縄キャンプでは主に右SBに入ることが多かったが、1月31日に行われたガンバ大阪との練習試合では“プロ初ゴール”も獲得。相手ゴールキーパーに果敢に寄せ、前線に送ろうとしたボールを体に当てるとそのまま跳ね返りがゴールになるという泥臭いものだった。
「最後まであきらめずにボールを追いかけて足を出す。そういった部分は自分の特長を出せている」という泥臭さは“鳥栖のDNA”を感じさせるものだった。SBのプレーについても「内側に入ることや内側に入ったところでボールを受けて前を向くこと。サイドハーフの経験を生かしたポジショニングなど、そういった場面を実戦の中でも多く作れていると思います。どんなポジションでもやれたら自分の評価も上がると思うし、いろいろなポジションができるのも自分の長所」と前向きに取り組み、着実に“堺屋佳介のSB像”を作り上げていった。
北島郁哉が選択した“我慢”の時。そして、2人に転機が訪れる
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Profile
杉山 文宣
福岡県生まれ。大学卒業後、フリーランスとしての活動を開始。2008年からサッカー専門新聞『EL GOLAZO』でジェフ千葉、ジュビロ磐田、栃木SC、横浜FC、アビスパ福岡の担当を歴任し、現在はサガン鳥栖とV・ファーレン長崎を担当。Jリーグを中心に取材活動を行っている。