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「クライフは幸運は存在しないと言った。私も同感だ」…言葉で振り返るマンチェスター・シティ対レアル・マドリー

2024.04.22

サッカーを笑え #11

あの内容にしてあの結果で、サッカーを全面肯定。試合後ペップ・グアルディオラが残した敗者の弁は、実にエレガントだった。3-3の第1レグを経て、エティハド・スタジアムで行われたCL準々決勝の第2レグ。1-1で90分を終え、延長戦+PK戦の末にカルロ・アンチェロッティのチームが競り勝った一戦を、当事者たちの言葉とともに振り返る。

サッカーを学ぶには最高の教材

 マンチェスター・シティ対レアル・マドリーは素晴らしい試合だった。

 最初に言っておくべきなのは、素晴らしかったのはプレーが行われた150分間(90分+延長戦+PK戦)だけでなく、その後の記者会見を含めて素晴らしかった、ということ。サッカーを学ぶには最高の教材で、そのサッカーを我われはどう受け止めるべきかという点でも最高の教材だった。

 グアルディオラの第一声は「これがサッカーだ」。まさにその通り。

 マンチェスター・シティは攻撃のお手本であり、レアル・マドリーは守備のお手本だった。どちらも見ていて感動、感心させられた。念のために言うと、これ、PK戦の勝者が逆でも評価は変わらない。攻撃と守備の両面がサッカーであり、最高の攻撃と最高の守備を1つの試合で堪能できる、という最高にお得な試合だった。

試合のハイライト動画。12分ロドリゴ、76分デ・ブルイネのゴールで1-1(2戦合計4-4)のまま120分でも決着つかず。PK戦では最初のキッカー、モドリッチが失敗したものの、続くベリンガム、ルーカス・バスケス、ナチョ、リュディガーが成功、そしてGKルニンがシティの2人目ベルナルド・シルバと3人目コバチッチのシュートをセーブし、レアル・マドリーが3-4で激闘を制した

 戦術面について1点だけ指摘しておく。

 あのアカンジの使い方、見ました? いや、DFを上げることは誰でもできる。そうじゃなくて、MF化したアカンジを崩しのためにどう生かせば良いのかをグアルディオラは思う存分、何度も何度も見せてくれた。

 「CBとSBの間にギャップを作る」→フォーデンとグリーリッシュにラインを踏ませて、ホーランドをセンターに張らせておくとできる。「そのギャップで数的優位を作る」→インサイドMF(右ベルナルド・シルバと左デ・ブルイネ)に加えてアカンジ(主に右。左は主にグバルディオル。アカンジが左に流れることもあり)を置く。ライン際の1人と合わせて計3人のトライアングルで、レアル・マドリーのSB(左フェルラン・メンディ、右カルバハル)とインサイドMF(左クロース、右カマビンガ)の2人を攻略する。これは、たとえ左ロドリゴ、右バルベルデが下がって来て、3対3の数的同数であっても攻略可能だ。なぜなら、ボールを持つシティの3人が主導権を握って先に動き出すのに対して、持たないレアル・マドリーの3人ができることはリアクションであり、必ず後手に回る運命だから、だ。

 このシティのCBとSBの間のスペースで数的優位を作る動きのオートマチックさ具合と、レアル・マドリーの根性のチェイスとマークと魂のサポートとインターセプト、さらにシティのロスト後のプレスの激しさという点に、両チームによる攻守の見どころが凝縮していた。

 戦術の話はここでおしまい。

「選手にこれ以上何を要求すればいいのか?」

 グアルディオラは続けた。……

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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