新・戦術リストランテ VOL.11
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第11回は、J1第8節終了時点で5勝3分の無敗で首位に立っているセレッソ大阪。2位サンフレッチェ広島と同じく、一度も負けていないチームの強さの秘密に迫る。
偽SB登里を加えた「3+2」が基本構造
C大阪は[4-3-3]([4-1-2-3])を基本フォーメーションとしています。以前取り上げた、日本では定着しにくい[4-3-3]ですが、やはり元のオランダ方式そのままではありません。川崎フロンターレや横浜F・マリノスもそうでしたが、何らかの調整は必要なようで、C大阪の場合もビルドアップで左SB登里享平が「偽SB」としてボランチ化しています。
ビルドアップの時は3バックと田中駿汰、登里の2ボランチによる3+2が基本構造ですね。これは先週、ブンデスリーガで無敗優勝を決めたレバークーゼンと同じです。
攻撃の決め手となるウイングにはルーカス・フェルナンデス、カピシャーバがいて、バックアップもジョルディ・クルークス、為田大貴と充実。インサイドハーフにも奥埜博亮、香川真司、北野颯太、柴山昌也、ヴィトール・ブエノと層が厚い。
第7節まで首位だった町田ゼルビアや広島、あるいは昨季優勝のヴィッセル神戸ほどの強度はC大阪にはありません。強度が低いわけではありませんが、それに特化したサッカーではない。志向しているのはボール保持の攻撃型スタイルだと思いますが、ここまでの好調を支えているのはバランスの良さと試合運びによるところが大きいと思います。
レーン上下動のシンプルな守備の機能性
守備は[4-3-3]、あるいは[4-5-1]([4-1-4-1])です。
田中の1人アンカーという、Jリーグでは比較的少ない形ですね。試合の流れと起用しているインサイドハーフの特徴によって、インサイドハーフを1人前に残す形の[4-4-2]ブロックにする場合もありますが、基本は[4-3-3]です。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。