森山監督も惚れ込む『こいちゃんスペシャル』 多くの監督に重用される守備職人・小出悠太が仙台の2年目で発揮する本領
ベガルタ・ピッチサイドリポート第12回
今シーズンからチームを率いる森山佳郎監督も、既に大きな信頼を寄せている。ベガルタ仙台の守備リーダーを任されている小出悠太のことだ。その実直なプレーは真面目な性格そのもの。最後の最後まで体を張れるディフェンス力は、どのチームでも例外なく重用されてきた。新指揮官の元で充実の序盤戦を過ごしているベガルタ加入2年目の“こいちゃん”こと小出を、おなじみの村林いづみが直撃した。
「一緒に心中できる選手」と森山佳郎監督も寄せる絶対的な信頼
「こいちゃん、右!こいちゃん、右!」
開幕戦の大分トリニータ戦で、中継の集音マイクが拾った森山佳郎監督の声だ。「それ、僕も知らなかったんですけど、あの時は交代でポジションがなかなかうまく上手く伝わらなくて……。『こいちゃん、右!』と大声で言っていたのが、話題になっていたみたいですね。後から聞いて、そうなの?って(笑)」
いたずらっ子のように笑う森山監督がその名を叫んだ「こいちゃん」とは、他ならぬ仙台の守備リーダー、DF小出悠太選手だ。この話を伺った日は4月1日。いつも饒舌な森山監督が一層熱を込めて彼のことを語ってくれた。エイプリルフールだからと言って、全く冗談要素は含まれていない。ほとばしる熱をそのままに、以下ノーカットでお届けしたい。
「こいちゃんは、キャンプからずっと全く休むことなく、傷むことなく続けてくれています。試合中も集中を切らさず周りに声をかけてくれる。カバーリングとか、本当に最後の最後の局面で体を張ったりしてくれるところは、こいちゃんならでは。『こいちゃんスペシャル』という感じです。ギリギリのところで間に合わせて体を張ってくれますよね。1対1の、もうヤバいという場面で、なんとかコケながらも防いだとか、一歩前に出て、ボールに体を当てたとか。そういうプレーでチームを助けてくれるので、相当大変だと思います。毎試合毎試合そうなので。だけど信頼感は抜群。ああいう取り組みの姿勢も含めて信頼できる、心中できる選手です。こいつがやられるなら仕方ないと思えるような姿勢を見せてくれます。4バックは安定していて、その中心的な存在です。怪我無くやっていって欲しいなと思います」(森山監督)
「抜群の信頼感」「一緒に心中できる選手」「中心的存在」。「こいちゃんスペシャル」という必殺技(?)の名前まで飛び出した。指揮官にこれだけの言葉を、一息で語らせる選手はなかなかいない。小出選手はヴァンフォーレ甲府時代とベガルタ仙台1年目の昨年は、伊藤彰監督(現ツエーゲン金沢)にキャプテンマークを託されている。監督スタッフや仲間に、そしてサポーターにも安心を届け続ける彼に、最近感じていることを聞かせてもらった。
昨年とは一味違う、守備の安定。「やっていることに間違いはない」
――連戦のスタート、第7節・横浜FC戦は見事な逆転劇でした。
「その日は本当に久々の逆転勝利だったので喜びには浸りましたけど、すぐに試合が来るし、しっかり切り替えています」
――アウェーの地にもかなり多くの仙台サポーターが駆けつけました。ホームのような雰囲気を作ってくれましたね。
「びっくりしましたね。ゴール裏は横浜より多かったんじゃないかというくらいで。三ツ沢もサポーターとの距離が近いので、そのパワーはひしひしと感じました」
――そういうパワーが逆転の力につながったところもあるのでしょうか?
「はい、そうですね。間違いなく。試合前のモチベーションから違っていましたね。気持ちが高ぶりましたし、やる気も出ました」
――小出選手はどんな時もあまり表情が変わらない印象があるんです。でも内側ではメラメラと?
「はい。燃えるものはありますよ」
――この試合では、チームとして久しぶりの失点もありました。失点のところはチームとしてどんな風に振り返って共有したのですか?……
Profile
村林 いづみ
フリーアナウンサー、ライター。2007年よりスカパー!やDAZNでベガルタ仙台を中心に試合中継のピッチリポーターを務める。ベガルタ仙台の節目にはだいたいピッチサイドで涙ぐみ、祝杯と勝利のヒーローインタビューを何よりも楽しみに生きる。かつてスカパー!で好評を博した「ベガッ太さんとの夫婦漫才」をどこかで復活させたいと画策している。