サッカーを笑え #7
治ったはずなのに治っていなかった無力感。たび重なる負傷に苦しみ、抗う選手たちに何ができるのか。『過密日程と強度向上による生存競争。ケガとともに生きる』特集の番外編として、今回はケガの「再発」について考える。
ケガの再発にはドラマがある。
ケガ自体はサッカーに付き物のアクシデントなのだが、再発となるとアクシデントとは言えなくなる。前のケガと今のケガの間にどんな関連性があるのか、なぜ頻発するのかの犯人探しが始まる。
例えば、3月初め通算8度目のケガに倒れたペドリ。すべて大腿筋の負傷で、左足を3度痛めた後、右足を5度痛めた。専門家の見解は“損傷個所が治り切らず脆くなっている”、 “左足を無意識にかばってバランスが悪化、右足を負傷した”ということで一致している。だが、負傷のメカニズムがわかっていることは、効果的に再発防止をできることを意味しない。
ペドリの体重はバルセロナに入って7キロ増えた。筋肉強化で予防する狙いだったが、その効果が出ていないことが、今季3度目の負傷でわかってしまった。テクノロジーの進化で負荷のコントロールは急激に進歩したが、筋肉系の負傷には気候条件から睡眠時間、食生活、精神的ストレス、本人の体質まで無数のファクターが複雑に絡み合っており、まだ謎が多い。
「どうして僕だけが?」の疑問に、答えはない
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Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。