新・戦術リストランテ VOL.7
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第7回は、浦和レッズや横浜FMの新監督たちが苦労していることから、「なぜ、Jリーグでは[4-3-3]が機能しないのか」という素朴な疑問に答えてもらった。前編では、議論の前提として[4-3-3]の中でも現代サッカーの潮流となっている(と同時に、西部氏が日本サッカーが苦手としているという)[4-1-2-3]というオランダ方式の解説から始めよう。
そもそも本当に[4-3-3]が苦手なのか?
J1第4節終了時点で、トップは町田。2位は広島。いずれも今回のテーマである[4-3-3]システムではありません。[4-3-3]で想起される横浜FMは9位、浦和は12位、川崎はなんと15位に沈んでいます。
ただし、まだ4試合に過ぎず、横浜FMは1試合未消化なので仮に3ポイント上乗せすると2位に浮上します。広島に並ぶ8ポイントを挙げているC大阪は[4-3-3]です。昨季優勝の神戸も[4-3-3]を使っていましたし、それ以前に優勝を分け合っていた横浜FMと川崎も同様です。神戸、横浜FM、川崎はどちらかといえば[4-2-1-3]なので、純然たる[4-3-3]ではないかもしれませんが、少なくとも3トップのチームがずっと優勝しているわけですから、[4-3-3]がJリーグに向いていないということはなさそうです。
1970~80年代のJFL時代も日産自動車など、多くのチームが[4-3-3]でした。というより、この時期は世界的にもだいたい[4-3-3]でしたからね。しかし、[4-3-3]が向いていないと感じるのも間違いではないと思います。
日本で消化不良の印象があるのは、オランダ由来の[4-3-3]です。細かく見れば[4-1-2-3]システムですね。
ファン・ハールの[3-4-3]で確立された思想
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。