REGULAR

「PSGはNGOではない」ルイス・エンリケのムバッペ外しと狂騒曲のフィナーレ

2024.03.17

おいしいフランスフット #2

1992年に渡欧し、パリを拠点にして25年余り。現地で取材を続けてきた小川由紀子が、多民族・多文化が融合するフランスらしい、その味わい豊かなサッカーの風景を綴る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第2回(通算160回)は、25歳のエースをめぐるパリ・サンジェルマンの現状について。そして彼らは悲願のCL制覇へ、4月の準々決勝で“宿敵”バルセロナに挑む。

リーグ戦ここ5試合、 先発外3フル出場0

 いよいよキリアン・ムバッペのパリ・サンジェルマン退団も決定的になったということで、ここ数年にわたってクラブを取り巻いていた『ムバッペ狂騒曲』も収まりそうだ。

 「レアル・マドリーに行く、行かない」

 「契約延長にサインする、しない」

 この2、3年は毎年、オフの期間中PSGの周辺はそんな話題に振り回されていた。

 ムバッペが、PSGのフロントに「この夏、クラブを去る」と伝えたとされるのが2月中旬。それ以降、ルイス・エンリケ監督は“ポスト・ムバッペ”期のチーム構想に着手しているように見える。

 2月10日のリーグ1第21節リール戦でベンチ入りしたムバッペを起用しなかったのは、その4日後に控えたCLラウンド16第1レグのソシエダ戦へ向けた“温存”だと受け取られたが、次の第22節ナント戦から3月10日の第25節スタッド・ランス戦までの4試合のうち、彼がフル出場した試合は「0」。ナント戦(○0-2)とランス戦(△2-2)はベンチスタートで、先発した第24節モナコ戦(△0-0)もハーフタイムにランダル・コロ・ムアニと交代している。

 そのモナコ戦では、ムバッペの交代後の行動が物議を醸した。ハーフタイムの間にすっかりスウェットスーツに着替えると、仲間たちのいるベンチに戻るのではなく、スタンドの関係者席に上がって、母親と並んでまるで“傍観者”のように後半戦を眺めていたのだ。

 モナコは彼が育成を受け、2017年にはリーグ優勝を飾った古巣であり、懐かしい関係者も多かったとはいえ、メンバー表に名前が載っていた選手のそんな行為は普通はあり得ない。これにはファンからも、「仲間への敬意がなさ過ぎ」という声が聞こえてきた。

……

残り:2,112文字/全文:3,231文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

RANKING