右肩上がりに成長を続けてきた20歳と19歳の胎動。柏レイソル・土屋巧と山本桜大に漂うブレイクの予感
太陽黄焔章 第10回
開幕から2勝1分けとスタートダッシュに成功しつつある柏レイソル。その中でも3試合すべてに途中出場を果たすなど、井原正巳監督の信頼を掴みつつある若い二人の存在は語り落とせない。プロ3年目の土屋巧、20歳。プロ2年目の山本桜大、19歳。成功と失敗を繰り返しながら日々前に進んでいる彼らの成長が、レイソルを進化させていくことは間違いない。そんな土屋と山本の二人が戦った開幕3試合を、今回も鈴木潤に総括してもらう。
68分。若い二人がヤマハスタジアムのピッチに送り込まれる
3月9日のヤマハスタジアムには強い風が吹き荒れていた。
柏レイソルの1点リードで迎えた後半の開始時に、ジュビロ磐田の横内昭展監督が動く。山田大記に替えて、190センチの長身FWマテウス・ペイショットを投入し、ジャーメイン良と高さのある2トップを形成した。
「前半以上に、長いボールを入れてターゲットにしてくるという形を狙っていたと思う」(古賀太陽)
センターバックの古賀と犬飼智也は高いライン設定を崩さず、集中力を研ぎ澄ませながら長いボールを前線に入れてくる磐田の攻撃に応戦した。ただ、強風に煽られたボールの軌道は予測しづらい。そんな予測不能の事態に古賀と犬飼が一度でも対応を誤れば、ディフェンスラインの背後のスペースを磐田の2トップに突かれる危険性がある。
「ハイボールに関しては、ボールがどこまで伸びるか、止まるかが難しい状況ではあった」
そう判断した井原正巳監督は、68分に交代カードを切った。白井永地と小屋松知哉に替えて、土屋巧と山本桜大、若い二人を同時にピッチへ送り込んだのだった。
若手から主力への脱却を期す2024年シーズン
ボランチを主戦場とする土屋は、今年プロ3年目の20歳。一方の山本はプロ2年目の19歳で、切れ味鋭いドリブルが武器のアタッカーだ。
昨シーズン、土屋はリーグ戦で18試合に出場し、山本は負傷離脱期間があったにもかかわらずリーグ戦7試合出場と、1年目のルーキーとしては上々の数字を残した。そればかりか、二人はともに12月9日の天皇杯決勝にも出場している。土屋は右サイドバックとしてスタメンに抜擢され、途中出場の山本は延長戦を含めて50分近くプレーし、大観衆の注目を浴びる緊張感の漂うPK戦では、冷静にネットを揺らした。
J1第3節終了時点で勝ち点7を稼ぐ柏レイソルで存在感を示す若い土屋(上)と山本
昨年の時点で、二人にはブレイクの兆候が見え始めていた。……
Profile
鈴木 潤
2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。