サウダージの国からボア・ノイチ 〜芸術フットボールと現実の狭間で〜 #2
創造性豊かで美しいブラジルのフットボールに魅せられ、サンパウロへ渡って30年余り。多くの試合を観戦し、選手、監督にインタビューしてきた沢田啓明が、「王国」の今を伝える。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第2回(通算180回)は、昨年10月17日の2026年W杯南米予選ウルグアイ戦で重傷を負ったセレソンの背番号10と、その現状に対する大先輩の苦言について。
「メッシとC.ロナウドは、ほとんど故障をしない。それは…」
「神様は、ネイマールに稀有な才能を授けた。しかし、彼はそれを生かし切っていない。実際のところ、この数年来、彼の個人的な関心はフットボール以外のことに移ってしまっている」
「夜は、寝るため、休養を取るためにある。近年、ネイマールが頻繁に故障するのは、彼が十分な休養を取らず、しかるべき節制をせず、アスリートとしての理想的な生活を送っていないからだ」
「故障が多いのは、彼のプレースタイルにも関係がある。自分がテクニックがあることをひけらかし、相手を愚弄するようなおちゃらけたプレーをする。それでマーカーを怒らせてしまい、削られることが非常に多い。テクニックを発揮するのは、敵のゴールから近く、相手守備陣にとって危険な場所でやるべきだ。それなら、マーカーも無茶なファウルはできない。メッシとクリスティアーノ・ロナウドは、以前からそうしている」
「彼らはネイマールより年上だが、ほとんど故障をしない。それはきちんと休養を取り、体の手当てをして、必要な練習を積んでいるからだし、マーカーを怒らせて削られるようなことがないからだ」……
Profile
沢田 啓明
1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。