3トップ沈黙のアーセナルが喰らったしっぺ返し。ケガの功名を手繰り寄せたポルトの組織力を分析する
せこの「アーセナル・レビュー」第9回
ミケル・アルテタ監督の下で一歩ずつ着実に再建を進めているアーセナル。その復活の軌跡をいち”グーナー”(アーセナルサポーターの愛称)でありながら、様々な試合を鋭い視点でわかりやすく振り返っているマッチレビュアーのせこ氏がたどる。
今回はCLラウンド16ポルト戦の第1レグをレビュー。アーセナルが喰らったしっぺ返しの正体とは?
アーセナルにとって2016-17シーズン以来7季ぶりのCLの舞台。恵まれたグループステージ組み分けの助けもあり、首位でラウンド16というかつての定位置にやってきた。迎える決勝トーナメント初戦の相手はポルト。近年のCLにおいては2020-21シーズンにユベントスを撃破して8強入り、昨季も16強入りと先輩にあたる存在である。
ポルトガル勢のCLでの戦い方を例年見ているとかなり共通項がある。攻守に前へ多くの人数をかけるのがトレードマークであり、多少リスクをとっても高い位置へのプレッシングから圧力をかけてショートカウンターの発動を狙う。流れの中での攻撃では前線と2列目が中央に集まり、大外をSBもしくはウイングバックに明け渡して、シンプルなクロスから多くの枚数が飛び込む形でゴールを脅かしていく。
昨季ELで対戦したスポルティングもこの特徴に当てはまるし、CL常連のベンフィカにも共通のコンセプトは見られる。そして、今季のポルトもまた上の特徴を兼ね備えたチーム。前輪駆動型というスタイルがポルトガル勢の代名詞となっている。
そんなポルトガルの雄と戦うアーセナル。久しぶりのCLの舞台においてまず大事なのは、好調の国内での戦いぶりをいつも通りにできるかどうかである。開始直後のライスの警告は心配させるものではあったが、それ以降は通常運転の落ち着きを取り戻したといっていいだろう。
トロサールのCF起用が機能しなかった理由
仕組みとしても特段変わった部分はない。ジンチェンコの離脱以降、ボール保持時にダブルボランチの一角としてライスの相方を務める選手は右サイドに役割委譲。ホワイトとウーデゴールがシェアしながら行っている。トロサールは前線で大きく動き、トップから離れた位置まで移動した時はハヴァーツがトップに入ることで前線の空白を埋めていく。いずれも公式戦3試合連続のスタメンとなったこの11人ではお馴染みのバランスである。
驚いたのはポルトの出方だ。先に述べたように多少強引でも前に圧力をかけてくると予想していたのだが、コンセイソン監督はコンパクトな守備ブロックの構築を優先。陣形もいつもの[4-4-2]というよりは[4-3-3]のような形で中盤中央の枚数を増やす守り方をしていた。……
Profile
せこ
野球部だった高校時代の2006年、ドイツW杯をきっかけにサッカーにハマる。たまたま目についたアンリがきっかけでそのままアーセナルファンに。その後、川崎フロンターレサポーターの友人の誘いがきっかけで、2012年前後からJリーグも見るように。2018年より趣味でアーセナル、川崎フロンターレを中心にJリーグと欧州サッカーのマッチレビューを書く。サッカーと同じくらい乃木坂46を愛している。