新・戦術リストランテ VOL.2
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第2回は、前回取り上げたレバークーゼンがホームでバイエルンと激突したブンデスリーガ首位攻防戦を徹底分析。3-0という予想外のワンサイドゲームをもたらした戦術的なポイントを考察してみたい。
ブンデスリーガ第21節はレバークーゼンとバイエルンの首位攻防戦がありました。結果はホームのレバークーゼンが3-0の完勝。バイエルンはシステムを合わせる対策を採っていったのですが通用せず。かえって格の違いが出てしまった印象でした。
この試合ではレバークーゼンのもう1つの顔が見えた気がします。
森保サンフレッチェを彷彿とさせる[5-4-1]
前回取り上げた通り、レバークーゼンはビルドアップ時の「3バック+2ボランチ」の間隔が非常に短いのが特徴です。この小さなボックスに相手を引きつけて、バイタルエリアやサイドでフリーになった選手へボールを供給して攻め込む。いわゆる「擬似カウンター」に近く、プレミアリーグのブライトンと似ています。
しかし、バイエルン戦で目立ったのは攻撃ではなくむしろ守備。それも[5-4-1]の撤退守備。ハイプレスが看板のレバークーゼンですが、後半に2-0とリードした後は[5-4-1]のブロックからのカウンター狙いになりました。
思い出したのは、かつて森保一監督が率いていたサンフレッチェ広島です。[3-4-2-1]が撤退して[5-4-1]になると、相手にとって非常に攻略が難しくなる。当時の広島はリードしたら[5-4-1]という必勝パターンがありましたが、バイエルン戦のレバークーゼンはそんな感じでした。
ハメに来たトゥヘル、引いたシャビ・アロンソ
バイエルンのトゥヘル監督はシステムをレバークーゼンに合わせて[3-4-3]にしてきました。トゥヘル監督はけっこうこれをやります。グアルディオラ監督率いるマンチェスター・シティとの対戦でもやっていた記憶があります。「レバークーゼンのビルドアップがなんか小賢しいけど、1対1にして潰してやるぜ」という感じでしょうか。
一方、レバークーゼンはプレスの位置がいつもより低めでした。……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。