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指揮官も明言して狙うのはJ1優勝!アルビレックス新潟・2024年シーズン新加入選手紹介

2024.01.31

大白鳥のロンド 第7回

6年ぶりにJ1へと復帰した2023年シーズンは10位。終盤戦は9試合負けなしでフィニッシュするなど、確かな進化を遂げたアルビレックス新潟。迎えた今シーズンは就任3年目となる松橋力蔵監督も「“てっぺん”を目指す」と明言しており、国内最高峰の舞台で堂々と優勝を狙いに行く。そんなチームには期限付き移籍からの復帰も含め、8人の選手が新戦力として加わった。今回はそんな彼らの横顔を、キャンプ取材を終えたばかりの野本桂子に紹介してもらおう。

「今年は“てっぺん”を目指します」(松橋力蔵監督)

 J1昇格2年目のシーズンを迎えたアルビレックス新潟。チームを率いて3シーズン目となる松橋力蔵監督は、新体制会見の冒頭あいさつで、「今年は“てっぺん”を目指します」と宣言。J1優勝という目標を明確に掲げてスタートを切った。

 昨季の最終順位は10位。シーズンを8〜9節ごと4クールに分けて、その都度、課題を修正しながらJ1に適応し、進化してきた。一時は15位に低迷したものの、4クール目にあたる第26節以降は9戦負けなし。第30節・サガン鳥栖戦で残留を決めた以降は、2週間に1回ペースになる難しさもあった中で、4試合連続完封でシーズンを締め括った。これは一戦一戦スキなく準備し、最後まで意識高く戦い抜いた証でもある。

 得点数は36。リーグ16位で終えたものの、テクニカルチームの分析によれば、ファイナルサード侵入成功率は75.3%(リーグ平均は66.3%)で、リーグ1位であることが昨季の総括会見で示された。フィニッシュ精度が加われば、得点数が伸びる可能性は大いにある。

 失点数は40。こちらは少ない順でいくと8位と、トップハーフに入っている。昨季の2人の得点王を擁するヴィッセル神戸と横浜F・マリノスを、いずれも2試合で1失点のみに抑えることができたのは手応えの一つだ。

 J1で活躍したことで、新潟から海外移籍の夢をかなえた選手が2人も出た。

 リーグ戦とほぼメンバーを入れ替えて戦った天皇杯は、選手個々がそれぞれの持ち味を発揮し、クラブ14年ぶりのベスト8へと進出した。

 “てっぺん”を目指すうえで、新潟にポジティブな芽は、いくつもあるのだ。

 強化部はまず、昨季終了時から22人の選手と契約を更新。さらに「自分たちのスタイルにフィットする選手、チームのために戦える選手」(寺川能人強化部長)をポイントに7人の新戦力を迎え、移籍先から復帰した選手1人と合わせて、8人が加わった。

 勝つため、主導権を握るためにボールを保持して攻撃するスタイルは、ここ4シーズン継続してきたことにより浸透した。だからこそ、適性のある選手には早くから声をかけることができた。また、オファーした選手も「新潟でサッカーがしたい」と口をそろえて、このチームに集った。

 まだ限られた回数ではあるが、取材した印象もまじえて紹介したい。

MF99小野裕二

Photo: Keiko Nomoto

 サガン鳥栖の10番をつけていた小野裕二。プロ13年目の昨季、キャリアハイの9得点を挙げた。内訳は、右足で4本、左足で2本、頭で3本と、どこからでもバランスよく点が取れる。昨季新潟はアウェイでも、ホームでも、彼のヘディング弾にやられた。味方になれば頼もしい限りである

 また、守備の圧もすごい。沖縄キャンプ中、1試合のみ公開された練習試合(1月23日・ガンバ大阪戦/45分×3本/2-1で新潟が勝利)で、それを実感した。小野が務めたのは[4-2-3-1]のワントップ。ゴールライン後方で撮影していると、DFそしてGKと次々間合いを詰め、選択肢を奪っていく。鬼気迫るプレス。「裕二くんが球際の厳しさを見せているのは、チームにとって強い刺激になっている」と、2日前に堀米悠斗が話していた言葉を思い出し、これか、とうなずいた。

 しかしピッチを出れば物腰もやわらかく、取材対応には丁寧に言葉を紡いでくれる。そして、子どもに優しい。新潟県庁の表敬訪問を終えた新加入選手たちが1階に降りると、どこからか聞きつけたのであろう親子が待ち受けていた。アルビのTシャツを着て、ちょっと緊張気味の少年に向かって、真っ先に話しかけていたのが小野だった。サイン、そして記念撮影と丁寧に応じる姿はまさに神対応。同行していたルーキー3人は、早速ファンサービスの姿勢を学んだのではないだろうか。

 横浜F・マリノスのアカデミーで育った小野にとって、松橋力蔵監督は当時の恩師でもある。「リキさんが監督だった高校2年生のときは高円宮杯(全日本ユース選手権)で優勝し、高校3年生のときはJユースカップで優勝し、全国制覇を2年連続させてもらった。そのときのうれしさは今も記憶に残っていますし、今度はそれをJ1の舞台で、っていうのは本当に思っています」と、今度はお互いプロの舞台でタイトルを目指す。……

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Profile

野本 桂子

新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。24年4月からクラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。

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