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宮城県出身選手が取り組む“MIYAGI絆PROJECT”。ベガルタ仙台が、地域と子どもたちの誇りになるために

2023.12.23

ベガルタ・ピッチサイドリポート第8回

今年のベガルタ仙台では、5人の宮城県出身の選手がプレーしていた。その中でも最年長の遠藤康を旗振り役に、郷家友太、菅原龍之助、工藤蒼生、小畑裕馬というメンバーで立ち上げたのが『MIYAGI絆PROJECT』だ。今回はこのプロジェクトの一環として、12月に行われた『夢教室』と『サッカー大会』を取材してきたおなじみの村林いづみが、その模様をレポートしながら、子どもたちとプロサッカー選手がふれあうことの意義について考察する。

 忘れられないスピーチがある。2010年12月4日。この年のJ1最終戦後、“ミスターベガルタ”千葉直樹さんの引退セレモニーでの言葉だ。

 「僕がベガルタの選手としてプレーした15年間は、ベガルタの歴史にとってほんの一部分でしかないと思います。この先の未来はこれからの選手の皆さんによって作られると思います。そこには、たくさんの希望が満ちあふれています。もしかしたら、この会場に来ている小学生、中学生、高校生。皆さんのその腕に抱かれている小さなお子さんたちが、近い将来ベガルタの一員としてこのピッチに立っているかもしれません。そんな少し前までは考えられなかったことが、現実のものになっている未来を僕は信じています」。

 宮城県仙台市出身、地元の東北学院高等学校からベガルタ仙台の前身となるJFLのブランメル仙台に入団した千葉さん。仙台一筋、前年にJ1復帰を果たし、ワンクラブマンとしてサッカー選手のキャリアを終えた彼の言葉だ。当時のベガルタ仙台に地元出身の選手は、ほとんどいなかった。

 千葉さんが現役引退した2010年、小畑裕馬は9歳、工藤蒼生、菅原龍之助は10歳、郷家友太は11歳だった。この頃、遠藤康は22歳。鹿島アントラーズで4年目を迎え、ACLではプロ初ゴールを決めていた。千葉さんが信じていた未来、「宮城出身のサッカー少年が、プロとしてベガルタゴールドのユニフォームを着て、ユアスタに立つ」という夢。それは今や夢ではなく、現実のものとなったのである。

まるで戦隊ヒーローのような5人の「宮城県出身選手」

 小畑裕馬は、度々こんなことを口にする。「去年、やっさん(遠藤)が入ってきてくれて、今年は(郷家)友太君、龍(菅原)、蒼生も来た。宮城出身選手は少なかったので嬉しいですよ」。

 “クラブの顔”である責任、一心に注がれる憧れのまなざしや期待、地域やクラブを盛り上げていくという覚悟……。『地元出身選手』という存在は、いろいろなものを背負っているのではないかと思う。個人の調子やチームの成績が上向いている時は良い。そうでない時は、矢面に立たされ、地元だからこその難しい時間を過ごすこともある(もちろん、それは地元出身選手に限らないかもしれないが)。そう考えると、同じ気持ちを分け合える仲間が多いということは心強いことだ。

 2023シーズン、ベガルタ仙台は所属する宮城県出身選手が過去最多の5人を数えた。塩釜市出身、鹿島アントラーズで活躍した遠藤康。多賀城市出身でヴィッセル神戸から加入した郷家友太。石巻市出身で仙台ユースから産業能率大学を経て入団した菅原龍之助。仙台市出身、仙台ユースから阪南大学でプレーし、帰ってきた工藤蒼生。そして、登米市で産声を上げ、仙台のアカデミーから2020年にトップ昇格を果たした小畑裕馬。他クラブでの豊かな経験を携え、また大学で積み上げてきたものを武器として、仙台に帰ってきた彼らが小畑と横一列で並ぶ様子は、さながら「戦隊ヒーロー」のようだ。子どもたちにはそう見えていて欲しいと思う。

 そんなヒーローたちは、2023シーズン、力を合わせて「MIYAGI絆PROJECT」を設立した。このプロジェクトでは、シーズンを通して全てのホームゲームに、事前応募で宮城県の高校生以下の子どもたちを招待。オフシーズンにはその子供たちを対象に選手と交流できる機会を設けるという取り組みだ。遠藤はこの活動に先駆けて、生まれ故郷に帰ってきた2022年に招待事業の「YASUシート」、子どもと交流する「YASU CAMP」を独自に行ってきた。遠藤が旗振り役を務め、今年は5人で手を取り合い、更にパワーアップさせた活動を行うことができるようになったのだ。

 遠藤はプロジェクト発足時に「自分の地元である宮城・仙台から1人でも多くのプロサッカー選手が出てほしいと思っていますし、1人でも多くのベガルタ仙台サポーターが増えてくれればうれしいです。まずはホームゲームへの招待を実施します。スタジアムで、生で試合を観戦してもらい、サッカーを好きに、ベガルタ仙台を好きになってもらえればと思っています」と思いを語った。

「MIYAGI絆PROJECT」を立ち上げたベガルタ仙台所属、宮城県出身の選手たち。左から郷家、遠藤、工藤、菅原、小畑(Photo: Idumi Murabayashi)

感動、時々爆笑。対話を大事にする「夢教室」

 12月10日、宮城県東部の沿岸地域に位置する七ヶ浜町の『七ヶ浜サッカースタジアム』に5人の姿があった。ここでは選手たちが自身の子ども時代やキャリアについて語る『夢教室』と広いピッチを使った『サッカー大会』が開催された。ボールを片手にトレーニングウェア姿の子どもたちも続々と集まってきた。スタジアムに招待した子どもたち、地元の小学生など約50人が選手とのふれあいを楽しみにやってきた。

 夢教室では、工藤、菅原、郷家がそれぞれ写真を交えてプロになるまでの自身の歩みを語り、司会は遠藤が買って出た。

工藤(左)と司会を務めた遠藤(Photo: Idumi Murabayashi)

……

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Profile

村林 いづみ

フリーアナウンサー、ライター。2007年よりスカパー!やDAZNでベガルタ仙台を中心に試合中継のピッチリポーターを務める。ベガルタ仙台の節目にはだいたいピッチサイドで涙ぐみ、祝杯と勝利のヒーローインタビューを何よりも楽しみに生きる。かつてスカパー!で好評を博した「ベガッ太さんとの夫婦漫才」をどこかで復活させたいと画策している。

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